楠木:さらに「ラール・エ・ラ・マニエール」というフレンチレストランを銀座でやっていらして、これも最前線系、手触り系を求めて始められたのですか?
鎌田:ワインが好きなのがきっかけです。こう言った段階で、すでにどこかのおやじになっちゃっていて危険ですけど(笑)。真実を言うと、仲がいいソムリエがいまして。ワインの話をしたがるやつってウザいじゃないですか(笑)。しかし当人からすれば、ワイン話を聞いてくれる人は、いい人ですよね。そのソムリエは僕のウザいワイン話をじっくり聞いてくれるわけです。「こうだよね」と得た知識を言うと、「そうですねえ」とうなずいてくれるから、いいやつだな、みたいな(笑)。その彼があるとき「レストランをやりたいんですよ」と言うから、ちょっと危険だなと思ったけれど話を聞いちゃったわけです。
楠木:いや、今のお話はすごくよくわかる。ワイン談義をしたがる人というのは、世間一般で言うと成功者じゃないですか。相手にお構いなしで一方的に話しますよ。鎌田さんには、それがない。「基本的に自分は相手に受け入れられない」と言うと語弊がありますが、そういう前提をお持ちのように感じています。その辺が僕が親近感を感じるところで、僕も世界は自分の思いどおりにならないし、都合がいい方向には行かないと思うほうです。自然に受け入れられると思っていない。だから一生懸命自分で共感を得に行く。
鎌田:僕、お仕着せが嫌いなのです。基本に、共感してもらいたいというのがあるのでしょうね。だから共感してもらおうとしすぎるきらいがあります。さっきの営業しすぎる話と同じで、社員を盛り上げたり鼓舞したりというのは、好きか嫌いかでいうとちょっと怪しいけれども得意だとは思います。なぜかというと、僕は共感を得に行っているから。相手が聞きたいことをちゃんと話せるところがあって、それが僕の得意なことだと思うし、営業でも明らかにそうです。
楠木:そうですか。その一方で、わんわん盛り上げてみんなの共感を得ながら、自分はちょっと醒めているところがあるでしょう。
鎌田:醒めていますよ。わんわん盛り上げていい会社にするって大変なことですから、醒めてるくらいじゃないと身が持たないんです(笑)。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら