企画、ブログ、小説。「書くこと」が好き
楠木:ワインのほかに、趣味として好きなこと、個人的な好き嫌いは何でしょう。
鎌田:何だろう。読書はたぶん好きでしょうね。先日、『奥さまはCEO』(牧野出版)という初めての小説を出版したこともあって、今は思い切り小説フリークですよ。しかも最近の作家ばかり、課題図書のように読んでいます。
楠木:パンにしてもワインにしても好きな人はたくさんいて、自分の生活の中で趣味として楽しんでいます。だけど鎌田さんの場合、パン屋とかレストランとか現実社会に踏み出していくじゃないですか。本が好きで読んでいるだけじゃなくて『奥さまはCEO』を書いてしまうとか。
鎌田:いい加減にしろと(笑)。
楠木:空想だけで終わらせず、世の中でリアルな動きにならないと満足を得られない。二次元だとダメ。あくまでも三次元重視。それも僕が共感するところです。小説は前々から書きたかったのですか。
鎌田:もともとはインテリジェンスの社員向けにブログを書いていたのです。だけど、すごく硬い話を硬く伝えるというのは誰でもできるし、それで本当に伝わっているかといえば微妙です。今期の業績うんぬん、お客様を第一にうんぬん、そんなことを書いてもどうせ読まないし、書いている自分も面白くない。それでちょっと面白いことを書こうとやってみたら外部の人たちも読んでいてくれて。今はローソン常務の加茂正治さんが「鎌田さん、もうちょっと書いたほうがいいよ」とか、けしかけてくれたりして、本格的にブログが始まったのです。
楠木:なるほど。そもそも書くことがお好きですよね。
鎌田:企画書も好きだし、そうかもしれない。本を書くというオファーが来たとき、ビジネス経営書じゃなく面白いものにしたいと思いました。僕は落語ファンですから。
楠木:純粋エンターテインメント小説ですね。
鎌田:ビジネスコメディという超ニッチなジャンルです。発想は、奥さんがCEOだったら面白いだろうという、単にそれだけ。バリバリでやって成功している女性経営者がダメな新入社員とくっつくみたいな話が縦糸です。横糸は、自分がベンチャー企業で経験したとんでもないエピソードです。お気楽な話のようですが25万文字書きましたからね。
楠木:ここが鎌田さんのもうひとつの特徴ですが、真剣にやるじゃないですか。25万字ですよ。
鎌田:書いているとき、サイバーエージェントの藤田晋さんに言われてショックだったのが、「鎌田さん、ちょっと必死感が出てるんですけど」。これはやばいな、共感性を失うなと思って、「いやいや、そこまでじゃないよ」と、やや繕うみたいな(笑)。アイデアが思い浮かぶとか、荒唐無稽なことが頭の中で巡るみたいなことが子どもの頃からありましたが、それが小説として人に見せるところまで持っていけるのかわからなかったので、チャレンジしたいという思いはつねにあったのです。
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