築地移転、延期騒動の陰に隠れた本当の問題 相次ぐ水産業者の廃業、補償にも課題あり

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移転延期を決定した小池都知事。都議会を守旧派に見立てて攻める様子はまさに"小池劇場"(撮影:風間仁一郎)

2月開場説は、この地下水モニタリングの結果が出た直後に移転する、という見立てだ。豊洲新市場の敷地は東京ガスの工場跡地であり、発がん性物質のベンゼンやシアン化合物などで、土壌が汚染されていることが問題となっている。これが小池知事の言うところの「安全性」への懸念材料となってきた。

築地市場内でも、この環境汚染と食の安全性を問題視し、移転反対の声をあげる関係者が少なくはなかった。そこで都は土壌の改良作業を実施。地下水汚染への懸念を払拭するため、地下水のモニタリングも継続していた。

東京五輪の運営に支障の懸念

問題は、2016年11月18日に最後の採水が行われ、その結果が2017年1月に公表される予定にもかかわらず、豊洲新市場の開場がそれ以前の11月7日に決まってしまったことだ。

“見切り発車”の背景には、「2020年の東京五輪までに環状2号線の開通を間に合わせる」、という思惑があった。環状2号線は、築地市場の跡地に通して選手村や競技会場と都心を結ぶ道路であり、大会の運営を成功させるうえで重要な役割を担う。大会前に完成させるには11月7日の移転でもぎりぎりのタイミングといわれている。

2017年2月開場にしても、1月のモニタリング結果が良好で、その他の問題もクリアした場合の最も早いシナリオだ。「知事の了解を得ても、すぐの移転は現実的に難しい」(築地市場の仲卸業者)という指摘もあり、さらに遅れる可能性は否定できない。

そこで次の移転タイミングとして有力視されているのが5月説だ。市場が休場となるゴールデンウイークの連休期間中に移転を済ませることで、営業活動への支障を軽減できることが理由である。

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