「人口減」は、日本が再成長するための武器だ 社会的構造改革を進める条件はそろっている

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──再トレーニングですか。

まずは人材のそもそもの質が問題になる。それが日本は高い。調査し比較すると、数的思考力、読解力とも世界でナンバーワン。ITを使った問題解決力は劣るとしても、それぞれ総合的に見たときに共に一番だ。しかも年齢別で中高年のレベルは断トツだ。

基本的な教育の学校システムが整っているのに加え、培ってきた終身雇用制で企業が人材を育成するのが文化になっている。しっかり学校教育を受けた人材が、会社に入ってからもきちんと育てられて能力をつけていく。中でも40代、50代のレベルは高い。これは衰退企業からシフトする際のスキル再訓練での吸収力が高いことを示すといっていい。

終身雇用制の弊害

村上由美子(むらかみ ゆみこ)/上智大学外国語学部卒業。米スタンフォード大学大学院国際関係学修士課程修了後、国際連合で国連開発計画や国連平和維持軍などの任務に携わる。任期終了後、米ハーバード大学大学院でMBA取得。米ゴールドマン・サックスでロンドン、ニューヨーク、東京勤務などを経て、2013年から現職 (撮影:風間仁一郎)

──一方で、労働市場に流動性が乏しいといわれます。

日本の労働市場の特徴である終身雇用制が影を落とし、労働市場に流動性を生まない。新卒入社後30年間なり40年間なり、育て訓練する。会社はその人に投資した分のリターンを生んでもらおうとする。会社人として育てたはずだからだ。

──「ハイブリッド人事」に変更せよと唱えていますね。

必ずしも終身雇用制が悪いとは思わない。人を長期的な視野で育成することはいい。それを抜本的に廃止するのではなく、一部修正しながら競争原理を導入していくのはどうかと言いたい。

たとえば年功序列の性質は消す。人事部が定年までのレールを敷いてあげるのではなく、若い段階で競争原理を入れていく。力があると思われる人には、20代後半からストレッチアサインメント(未熟者に重責を課すこと)で能力向上を促す。そうすれば力量の差がはっきりするし、キャリアの見通しもつけやすい。

──リーダーの選別はどうすれば。

従来、日本では新卒横並びで会社に入って出世競争は遅く始まる。おおかた40歳ぐらい。それでは国際競争には勝てない。20代後半から始めれば、国際的な競争力をつけた人材が育つ可能性も強まる。

新卒者だけを採る、就職活動は横並びでタイミングも画一というのもいただけない。そこから外れた人はあぶれてしまう。採用システムに関しては、そこでも門戸を広げ、報酬、昇進については自由競争という原則を取り入れることが重要だ。

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