隈研吾、新生「歌舞伎座」を語る 『建築家、走る』を書いた隈研吾氏(建築家)に聞く

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──この本には「富とパワーの最前線の指標が建築」ともあります。

日本の場合、単に経済的に元気がないというだけでなくて、決断できる能力のある人が減ったという気がする。建築は大きいプロジェクトが多い。決断できる人がいないと、いい建築はどうしてもできない。中国やヨーロッパ、米国で大きなプロジェクトを担うことができるのは、強力なリーダーシップや時代感覚を持って決断してくれる人が相手側にいるからだ。日本でそういう人に出会うことが少なくなった。

──建築には同志的な結合が必要とも。

ビジネスの相手として、結局同志にならないとやっていけない。養老孟司さん風に言えば「共倒れの関係」が必要だ。大建築物には何十億、何百億円のおカネが出るから、下手をすれば共倒れになる。運命共同体なのだ。相手のビジネスが失敗したら僕だってつらいし、僕が満足できなかったら相手だってつらい。共倒れの関係が根底にあれば、プロジェクトはうまく進むようになる。

──後進の人にも一言。

建築の学生に伝えていることは、相手の気持ちにならないと、君自身も自分を通せないよ、ということ。その建築を使う人の立場になれるかどうか。それは造る人、おカネを出す人や工事する人も含まれる。そうすれば、自分の考えとは違った価値観があったり基準があったりするのが見えてくる。実際、相手の立場に立てなければ、どんなにいい案を出しても乗ってきてくれないし、逆に相手の立場で説明できれば、相手は否定できなくなる。

大事なのは、自分を捨てて相手の立場に立てているかどうか。いかにして自分を出すか、自分、自分とだけ考えていては、ちっぽけな自分も一生実現できないよ、と言っている。

週刊東洋経済2013年3月30日号

建築家、走る
新潮社 1470円 222ページ

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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