──艶っぽい歌舞伎座を心掛けたとあります。
たとえば質感。普通のモダン建築の作法では、白は白ペンキによる塗装ばかりで、あまり種類はない。艶っぽさを出すため、めちゃくちゃこだわり、新しい塗装の仕方を使っている。ケイ素系の粉体塗装をした。表面は細かい粒子でできていて、質感も柔らかいし、汚れに対し自浄作用もある。実は外壁には3種類の材料を使い分けている。それがその塗装をすることによって同様に柔らかいおしろいを塗ったようになる。艶っぽさはそういうところからくる。最新の技術が作り出した白をぜひ堪能してほしい。
1954年生まれ。東京大学大学院建築学科修了。慶応義塾大学教授を経て、2009年より東大教授。作品は「亀老山展望台」「水/ガラス」「森舞台/登米 町伝統芸能伝承館」「竹の家」「那珂川町馬頭広重美術館」「ブザンソン芸術文化センター」「根津美術館」「梼原町役場」「アオーレ長岡」など、国内外に多数。
──天候でも変わる?
僕は雨の日が好き。雨の日は全体に暗くなり影がそんなに出ない。きめがよく見える。晴れると影ができる。コントラストが強くなって、日が当たっているところはことさら白が強く出るし、影のところはきめが闇の中に消えてしまう。
──全体は超高層ビルです。
オフィスビルであることを同時に考え、いわば高層ビルが舞台の真上に載っている。高層ビルの柱は舞台の両袖にある柱と同一。つまり高層ビルの柱をそのまま舞台横に使っている。舞台自体が前よりも広がり、そして上に高層ビルを載せている構造だ。高層ビルを支えるはりと柱のシステムに特別の工夫をしたから、それができた。
──渋谷再開発も手掛けられています。
東京急行電鉄東横線が地下鉄と直結し、いよいよ本格化する。超高層ビルが4棟建つ。手掛けるのは東急とJR東日本、東京メトロの3者が家主のビル。歌舞伎座は公演を休めたが、鉄道は休めない。線路の位置は変わるし、日夜運行する鉄道が絡むと、普通の工期の倍ぐらいかかる。渋谷は15年後の2028年に全面完成の予定で、ハチ公広場や超高層ビルは順次もう少し早くできる。
──まもなくオープン1年になる新潟県の長岡市役所でも新境地を開きました。
昨年4月にオープンした。市役所なのだが、真中に広い広場を造った。フルネームでは、「シティホールプラザ・アオーレ長岡」という。女子中学生が推薦した「会おうよ」の意味の土地の言葉「アオーレ」から命名された。今日も広場はにぎやかと市長から電話がかかるぐらい人出がある。設計士をしていて一番の幸せは、建物がかっこいい、きれいと言われることより、人がたくさん来てくれることだ。みんなが愛している証拠だからだ。
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