2050年の日本、夕張で学んだ「支える医療」 村上智彦氏(医師、NPO法人ささえる医療研究所理事長)に聞く

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「戦う医療」から「支える医療」へ──。財政破綻の夕張市で学んだ医師が説く、高齢社会の医療のあり方とは。

──夕張は先進地域なのですか。

夕張は、財政破綻で医療も崩壊して大変、市民はかわいそうと一様に思うようで、確かに総合病院がなくなり、診療所化された。これは医療の後退、医療 崩壊とは建物とそれにかかわる医者がいなくなったこと、と思い込まれている。恵まれている状態とはいえないが、在職の5年を振り返ってみると、医療費激減の一方で、死亡率は下がり、平均寿命も延びているか変わらない。

むらかみ・ともひこ
薬剤師、臨床検査技師、北海道薬科大学客員教授、金沢医科大学学外臨床教授。医学者としての専門分野は地域医療、予防医学、地域包括ケア。1961年北海道生まれ。北海道薬科大学、金沢医科大学医学部卒業。2006年から、財政破綻した夕張市の医療再生に取り組む。2009年若月賞受賞。

長野県が男女とも長寿日本一になった。病院が多いわけではない。住民の検診の受診率が高く、健康に対する意識が高いことが押し上げた。これが純然たる理由だ。とかく夕張では、救急医療がないと命にかかわって、住民はかわいそうだといわれたが、不安をあおるだけでは住民の健康意識は変わらない。

──ケア重視に変えました。

余裕がなかったこともある。最善の方法として、住民自身が健康づくりで医療負担を減らしていくしかなかった。住民が看護師や介護士の資格を取って起業し、24時間型の訪問看護ステーションを立ち上げてもいる。やってもらうのを待つのではなく、自分たちで動く。今、私は主に隣町で在宅ケアを手掛けているが、近隣施設四つを束ねてみた。一つだけでは大変でも、シェアするとスムーズにいくことが少なくない。

たまたま夕張は高齢率が高くて、いわば「2050年の日本の縮図」になっている。これから高齢化は大都市部で大変になってくる。人口が多いので当然、圧倒的に多くの数の高齢者が住むことになる。今までの医療のやり方では、日本中の医者を連れてきても対応は無理だろう。従来と違う仕組みで支える必要がある。夕張はそれを先取りする雛形になっている。

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