2050年の日本、夕張で学んだ「支える医療」

村上智彦氏(医師、NPO法人ささえる医療研究所理事長)に聞く

──日本には将来について悲観論が多くあります。

高齢化が進んでいくのは日本のどの地域も共通している。連携していくことだ。経済がダメといわれてもGDP(国内総生産)は世界3位だし、医療のレベルは世界一。その一方、医療費は先進諸国の優等生。それでも平均寿命は世界一長く、乳幼児死亡率は世界一低い。こんなに恵まれている。

くよくよと心配するより、できることをどんどんやる。まず社会につながりを取り戻す。それもヨコ社会やタテ社会ではなく、それを複合した「斜め社会」という、新しい社会資本を作っていく。そうすれば、その地域でもっと楽しんで生活ができ、死んでいける。

──死んでいける?

人間の死亡率は100%なのを前提に対応を進めていかねばならない。医者仲間が言うには、東京大学病院に行けば100%死なないで済むと思っている人が本当にいるという。死が前提と割り切れと断じると、「年寄りに早く死ねというのか」と糾弾されるが、そうではない。「お年寄りは若い人より早く死ぬ」と言っているのだ。夕張で始めた「支える医療」はそれを前提にしている。

しかも、たとえば90歳の人に50歳の医療を行ってはいけない。頭を切り替えないとバカみたいにおカネがかっていく。もう来るところまで来ているともいえるが。

──支える医療が根幹ですね。

従来は若い人口構成だったから、医療は病気と戦って勝つことができた。勝つとは病気が治って社会復帰することをいう。高齢化が進み、超高齢社会になってくると、平均寿命が世界一とはいえ、戦っても勝てなくなる。

明瞭な事実として、高齢者は入院するだけで死亡リスクと認知症リスクが上がる。つまり安静を強いること自体がリスクになる。70歳以上では入院して3日や4日寝ているだけで、認知症発症率が極めて高くなる。それにもかかわらず以前と同様な発想で、たとえば1週間点滴したら治るという常識を当てはめたら、罪なことになる。その人は認知症がひどくなって従来の生活に戻れない。

支える医療では予防ケアや在宅ケアを重視する。そうすれば、社会的なおカネが軽減されるし、ケアを受ける人にとっても「被害」が少なくて済む。ただ、それは医者と看護師だけではできない。本人と家族の覚悟に加え、そのほかの人たちの力も借りることになる。それが支える医療の本質だ。

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