ここで肝なのが“生産性の向上”というキーワードである。
仮に代替不可能な余人をもって代えがたき人材であれば、ユニクロとてあなたを過度にこき使うことはできないということだ。以前のコラムでも述べたが、優秀で生産性の高い社員を多く抱える業界では、会社に収入をもたらしてくれる“長期資産”であるあなたをつなぎ留めるために、これでもか、というくらいの豪華な福利厚生がついてくる。
アセット待遇を受ける社員と、コスト扱いの社員の差
最近びっくりしたのは、マレーシアの政府機関で働く友人の話だ。
一般的に労働環境がよいとはいえない東南アジア諸国だが、たとえばセントラルバンク(中央銀行)などで働いている人材の場合、嫁さんが留学するとなればその嫁さんが留学している数年間、旦那も会社から給料をもらいながら嫁さんについて海外に行けるのである(ちなみにその旦那は政府系銀行に籍を置いたまま、国のお金でパリでパテシェ留学中である)。
ほかにも一部米国系金融機関でも、長期出張するときに「Signifcant Others(配偶者・恋人などの重要な人)」向けの予算として、奥さんや彼女一人を連れて行く往復のビジネスクラスチケットを会社が用意してくれたりする。
そして某米国系弁護士事務所では、エクスパット(本社から海外支社に派遣される社員)として東京で半年ほど働くときは、東京ミッドタウンのオークウッドで月100万円くらいのサービスアパートメントが用意される。
会社は、代替が難しい、会社に利益をもたらしてくれる社員を引き留める努力(=長期資産化する努力)を会社の戦略的優先課題と見なしている一方、そうでない代替が簡単な社員はできるだけ安い費用として扱い、バランスシートから切り落としていく。
この論理で行くと、社員にできるのは“多少自分が利益をもたらさなくても自分を大切にしてくれるアリガタイ会社”を見抜くか(ただしそんな会社のサステイナビリティは疑問だが)、自分の生産性と、会社にもたらす資産価値を高めるしかないということになる。
ビジネスモデルを見れば、社員への待遇は予測できる
そもそもユニクロは安価で高品質というのを売り物にしており、増益と株高でも有名なのだから、搾られるのは投入コストの原材料メーカーと労働者であるのは当たり前のことではないか。高級ブランド路線で高マージンと高給人財を結集しているビジネスモデルでないのは明らかなのだから。
われらが東洋経済の記事にもあったが、マクドナルドにしてもしかり、安価を強みにしている業態の最前線で働いたら、牛肉と小麦粉代が値切られるのと同様、労働賃金も値切られる。(人工的に)最低賃金でフロアが設けられていたとしても、規定外で長時間働かされることで実質的な平均単価は下げられる運命にあるのだ。
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