ブラック企業にだまされないために、常識的な感覚を
ただし私は「ユニクロがブラックというのなら、ほかにいい仕事を探せないあなたが悪い」などと突き放すつもりはない。(決してユニクロのことではないと強調しておくが)確かに情報の非対称性を利用して就職活動者を食いものにする悪徳企業は存在するので、ちょっとしたヒントを残しておきたい。
まず一般的に起こる問題だが、総じて就職説明会やパンフレットはもはや単なるCMとなっており、会社が社員に提供できるキャリアや便益とは懸け離れた上っ面のイメージ戦略が跋扈している。
“グローバルリーダー募集”のような、やたらとエキサイティングな機会が、大してスキルのない自分に回ってきたら、「これは絶対儲かるから、タイのエビ養殖屋に投資しよう!」という怪しい投資勧誘に抱くべき警戒心と同レベルの警戒が求められるだろう。実力のない自分が特別扱いされるわけもなく、高い評価を受けるわけもなく、面白い仕事が回ってくるわけもないのだ。人は自分の幸運について過大評価しがちで青い鳥を求めてさまよう生き物だが、白昼夢より現実に関心のある人は、自分の幸運さに関して保守的に見積もろう。
ユニクロの海外戦略に合わせニューヨーク勤務して、ヨーロッパ進出をサポートして……といった、かっこいい夢を抱きがちだが、そうした仕事は、何年もかけてその職にふさわしいことを証明して初めて任されるものだ。それなのに、この当たり前のことをわかっていない人が(われらが「東洋経済オンライン」の読者の皆様を除いて)多い。
会社はイメージを高めるために美男美女をパンフレットに載せて、“社会貢献事業を支援しています”といった広告を載せるが、社員のごく一部の広報要員の仕事を自分ができる可能性は1%以下なのに、その可能性に胸を膨らませる人が多いのはあまりにもナイーブである。
ユニクロに限らず、総じて企業のイメージアップPRにだまされることのないよう、企業CMや就職説明会での宣伝は、ユニクロの冬服のファイナルセール並みに割り引いて考えるのが妥当な線であろう。
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