国債の大規模購入と財政政策の危険な関係

米国でもリスクを警告する論文が話題に(日銀ウォッチャー)

長期国債の買い入れに関しては、資産買入等基金による買い入れと以前からの「金融調節の一環としての買い入れ」(「日銀券ルール」に沿ったいわゆる“輪番オペ)をいずれは統合する方向で議論が進んで行くだろう。

前者はこれまで残存期間3年以内、後者は30年までの国債を購入してきた。前者での購入を今年から拡大していこうにも、市場に”玉“が十分に存在していないため、残存期間を5年あるいは10年へと拡大していく必要がある。その場合、後者の”輪番オペ“との差が事実上なくなってくる。両者を統合すれば、市場に対して日銀は毎月巨額の長期国債を購入しているというイメージを強めることができるだろう。

特に海外の市場参加者の間では、日銀が”輪番オペ“で30年までの国債を購入し続けていること、2つのオペを合わせると政府の年間の新規国債発行額に匹敵する国債を日銀が買い続けていること、が意外に知られていない。その点では統合はアナウンスメント効果を強めると思われる。

金融緩和策が財政政策に支配される恐れ

しかし、問題もある。白川体制の日銀が基金の方での長期国債の購入を抑えてきたのは、将来の出口政策の困難化を避けるためと、政府・国会の財政規律を一段と緩めるきっかけになることを避けるため、という2つの理由があった。「デフレの時に中央銀行はそんなことは考えなくていい」という見方が今は多いが、それらの問題はいずれ日本国民に跳ね返ってくる。

アメリカでも金融政策とその出口、財政規律との関連が意識され始めている。2月22日にニューヨークで開かれた「US金融政策フォーラム」で発表されたD・グリーンロウ(モルガン・スタンレー)、J・D・ハミルトン(カリフォルニア大学サンディエゴ校)、P・フーパー(ドイツ銀行証券)、F・S・ミシュキン(コロンビア大学、元FRB理事)による財政危機と金融政策の関係を分析した論文が大きな話題となっている。

彼らは、FRBによる長期証券の大量購入は、先行きの出口政策時に巨額の損失を派生させ、深刻な政治的問題となり得ることをシミュレーションで示した。さらに、過去の多くの国での財政政策と金融政策の関係を検証した結果、政府・議会が財政再建に進んでいるときは金融緩和策は良い効果をもたらすが、そうでないときは金融緩和策は財政政策に最後は支配され、事態は著しく悪化してくケースが多いと述べられている。その4人のエコノミストは、今の米国の議会が機能していないことを考慮すると、後者のシナリオの可能性を否定できないと危機感を表している。

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