国債の大規模購入と財政政策の危険な関係 米国でもリスクを警告する論文が話題に(日銀ウォッチャー)

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国会は新しい日本銀行総裁に黒田東彦氏、副総裁に岩田規久男氏、中曽宏氏が就任することを同意した。3月20日からその3人による日銀新体制がスタートすることになった。

国会での3人の所信聴取に対する金融市場の関心は非常に高かった。海外のヘッジファンド関係者に聞くと、黒田氏の所信聴取が東京時間の月曜日午前に行われた際は、日曜夜のニューヨークのオフィスで多くのファンド・マネージャーたちが、ヘッドラインが流れる通信社のスクリーンにかじりついていたという。

ただし、国会での議論で気になったのは、議員たちの質問がオペレーションの技術論に傾き過ぎていた点である。3人のうち、黒田氏と岩田氏は、今まで日銀の実務に携わっていないため無理もないのだが、彼らは金融調節の細かい技術論にそれほど詳しい訳ではない。このためそういった質問に対しては、基本的に「今後検討する」というニュアンスの返答にならざるを得ない。それに国内外のマーケット関係者が一喜一憂して反応するという妙な構図が何度も見られた。

国民の代表である議員らが国会で本来議論すべきだったのは、今後行われる「大胆な金融緩和策」が、国民経済に与え得る長期的なメリットとデメリットの比較考量である。

米議会では大規模な金融緩和策の副作用を議論

日本と極めて対照的に、2月26~27日に行われたバーナンキFRB(米国連邦準備制度理事会)議長を招いての米国上下院での公聴会では、正にその論点の議論が延々と行われた。

「株式、国債、ジャンクボンド、農地の市場でバブルが起きているのではないか?」「FRBはバラスシートを正常化できるのか?」「投資家の過剰なリスク・テイクを制御できるのか?」「金融緩和の長期的なコストはその利益を上回るとBIS(国際決済銀行)は警告しているではないか」といった発言が、共和党議員を中心に相次いだ。

次ページ日米が相互に金融緩和をエスカレートしていく危うさ
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