卓球男子が超速で「世界最強」に近づいた理由 悲願の「中国超え」も夢ではない

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まず今大会奮闘した男子においては本格的な中国対策、そして、ITTFワールドツアーを通じた海外での実績と経験を今以上に積む必要がある。世界トップのプレーを肌で味わうためには、とにかく海外に足を運び、強豪選手に挑み続けるしかない。ラリーを得意とする欧州勢、パワーそして回転量の多い中国選手と少しでも多く対戦し、その感覚をつけていくことが望まれる。

また、2008年に日本オリンピック委員会の強化プログラムとして開設した「JOCエリートアカデミー」で、日本トップレベルの練習環境、指導者によるトレーニングを通じて若手選手の育成にさらに力を入れることは引き続き重要だ。特に13歳にして、アンダー18の世界ランキングでトップに立つ張本智和選手を育てることは、東京2020で中国超え、金メダルの獲得を狙うために必要不可欠だ。

力負けする女子がするべきことは

一方、女子においては、「打倒、中国」を合言葉に引き続き技能を磨く必要があるものの、そのほかの強豪国に対しても対策が必要だ。特に、今回、石川、福原両選手が苦しめられた北朝鮮の選手や、中国からほかの国へ帰化した選手たちは、世界選手権やITTFワールドツアーなど国際大会になかなか出場してこないため、どう対策を打つのか、またどのように情報を集めるかが課題になるだろう。

また、他国に比べ小柄な選手が多い日本勢にとって、後陣のポジションで回転をかけながら粘り強くディフェンスし続けるカットマンへの対策は必須だ。パワーで押し切ることができないぶん緩急がつけ辛いため、ラリーでの粘り強さ、コース取りなどをより戦略的に行う必要がある。また、中国のトップ選手のリーチやパワーに対抗する術の習得も欠かせない。これまでも、男子選手と練習を行うなど対策は講じてきたが、さらなる強化策が必要だ。

もちろん、課題ばかりではない。団体戦に出場した伊藤美誠選手や、リザーブ選手として帯同した平野美宇選手のように男子同様、東京大会に向けてさらなる成長が期待できる若手選手たちが出てきている。これからの4年間、上記のような対策を徹底すれば中国超えも現実味を帯びる。

リオオリンピックは終わったばかりだが、オリンピックで悲願の中国超えを果たすには、あと4年しかない。今後、水谷に続く世界基準の選手が出てくるかどうか、非常に楽しみである。

平尾 諭 EF総合教育研究所研究員

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ひらお さとし / EF総合教育研究所研究員

1983年生まれ、岐阜県出身。中央大学大学院 戦略経営研究科(ビジネススクール)卒業。

アマゾンジャパン、オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパン・グループなど外資系企業を得て、2014年、53カ国で教育事業を展開する世界最大の私立教育機関EF Education Firstの日本法人であるイー・エフ・エデュケーション・ファースト・ジャパン・グループ(EF)に入社。入社後、オンライン英会話スクール「EF English Live」のマーケティングマネージャーして「EF English Live」の国内のマーケティング戦略を担ったほか、国内のトップアスリートを対象にした英語トレーニング支援を推進。現在はEF総合教育研究所の研究員としても活動し、国内外の教育、人材開発に関する様々な調査分析業務を遂行する。

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