飲み会で進路は決定!
前置きが随分と長くなりましたが、医局自体の存在は悪いことばかりではありません。もちろんよい面もあり、基礎医学の分野で製薬会社と組んで新薬を開発したり、難治性の病気に対する新しいアプローチを考えたり、臨床においては大学の付属病院はもとより、その関連病院を中心に医師を派遣することで、地域の医療を支えているというすばらしい面があります。
しかしながら、2004年に初期臨床研修病院を自由に選択できるようになってからは、医局に残らない医師も増え、マンパワー不足を引き起こしています。そういった事情もあり、医局員確保のために大学側も若い研修医を自分の医局に入れようと必死になります。表向きは大学の●●●教室という立派な看板を掲げており、もちろん試験や面談をするところは多いですが、それだけでは足りないということで、飲み会での勧誘が盛んに行われます。通常、医局員の募集においては『●●教室の入局説明会』という名称で興味のある研修員を集めますが、それには飲み会がセットとなっており、「うちの医局においで!」と医局員が研修医をお酒の席で誘うということが熱心に行われます。
私が以前、あるイベントで知り合った初期研修中の医師は、民間病院に行くか、現在属している大学の医局で後期研修を受けるかたいへん迷っていましたが、入局説明会後の飲み会で先輩の医師に熱心に入局を勧められ、その大学の医局で研修を決めたということでした。
実は、初期研修中の時点ではいくつかの診療科を順々に回っている(=ローテーション)状態で、今後の進路について確固たるビジョンを持っている人は結構少ないのです。そういったときに先輩の医局員が、お酒を飲みかわしながら、その医局の実状、教授の性格、仕事の忙しさ、楽しさ、つらさ、はたまた恋愛についてまで熱く語るわけです。先輩医局員としては、基本的に自分より下の学年がいたほうが組織的にもバランスが取れるので、目を付けた研修医は特に熱心に勧誘するのです。
勧誘を受けている研修医からすると、「そこまで先輩に言われたら……」という気になりますし、やはりお酒を飲んで語りあうと親密度が増すのは当然。この先輩がいるのであれば入局しようという風になるのも珍しくありません。
このように医師の就職活動においては、優秀な研修医を飲み会で勧誘するという風習も残っています。なんだかバブル経済時に多くの企業が優秀な学生を囲い込みしようと旅行や食事会に誘った状況に似ていますね。
医師の就職においてはコンピューターでのマッチングあり、飲み会ありということで、とてもバラエティーに富んでいるのがわかっていただけたと思います。
次回は、女性ドクターについてその勤務の実態やキャリアについてお話ししたいと思います
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら