ビンセント:中国のパラノイア的手法には主に2つの要素があります。
まず第1は、「激しい攻撃性や誹謗中傷」です。文化大革命の時に知識人に自己批判させた時も、万座の前で土下座をさせます。弱肉強食というような考えで弱者に対して攻撃的ですから、誰も政府に逆らえなくなります。
2つ目が「異常な独占欲」です。尖閣諸島の問題は、まさに中国の独占欲そのものですが、過去の経過などはまったく無視されるのが当たり前なんです。共産党の1党独裁は必ず維持できると信じているから、今後も独占欲はさらに増大して来るんじゃないでしょうか。
北原:でも、こう言ったパラノイア的なやり方だけでは、いずれ限界が出てくると思いますが、華人の流れをくむシンガポール人の立場から見るとどうですか?
ジェームス:シンガポールの場合は、妄想的、偏執的な政治手法でも、「良い国家にしたい」という理想主義が根本にあったから、国民がそれを認めたし、事実シンガポールは世界でも稀な豊かで安全な国家になったんです。また、シンガポールは小国であったからこそ、改革が実行できたという面もあります。
ビンセント:シンガポールも確かに華人の国家ですが、今の中国は多民族で、あまりにも超巨大国家ですから、複雑すぎて「商鞅の変法」も、リー・クアンユー的な理想主義を目指すこともたぶん、無理だと思いますよ。世界一のアンチパラノイア国家の日本とパラノイア国家の中国を足して2で割れば、ちょうどバランスの取れた国になるんですがねえ。
(撮影:今井 康一)
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