日銀ETF買いが支える日経平均の「危うさ」 投資家は円高基調の日本株買いに迷っている
10日の日経平均は5日ぶり反落となったが、1万6800円台を回復する場面があった。日銀のETF買い支えに対する安心感が広がった結果であろう。しかしながら、外部環境は何も変わっていない。現在の楽観的な動きがどのような結末を迎えるのか、非常に興味深いところである。
前回の本欄でも解説したように、日本の株式市場では、日銀が先の金融政策決定会合で決定した上場投資信託(ETF)の買い入れ増額が安心感を与えている。そのような状況の中で、株価が下げたときに買うとみられていた日銀が、株価が上げた場合でも10億円程度の買いを入れていることが判明し、市場ではさらに下値不安がないとの見方が強まっている。その結果、楽観的な見方がきわめて強くなっており、円高をものともしない堅調な値動きになっている。
10日の日本時間においても、ドル円が101円台前半まで急落したにもかかわらず、日経平均株価はほとんど反応せず、むしろ上昇した。大引けにかけて下げた場合には700億円、上げた場合でも10億円規模のETF買いを行うのであれば、確かに株価は下げようがない。10日の前場では、ドルが急落する動きが見られた。前日の米国債の利回りの伸び悩みが背景だったが、当日発表された機械受注の数値が予想より強かったことも材料視されたが、この円高の動きを株式市場は無視して上昇したのである。
円高=株安は通用しなくなった
このように、ドル円が急落、つまり円高に進んだ場合には、これまでの日経平均株価であれば、容易に下落した。「円高=株安」のロジックで、投機筋を中心に売りを浴びせてくる市場参加者が少なくなかったからである。しかし現在、そのようになっていないところに、これまでの市場構造との違いを感じる。無論、前述のような戦略を取る市場参加者がいないことも背景にある。
これまでのドル円と日経平均株価の関係からみると、101円のドル円水準の日経平均株価の理論値は1万4400円程度となる。10日の日経平均株価は1万6500円さえも割らずに推移していた。この動きを見る限り、市場はドル円の動きをまったく対象としていないのだろう。しかし、ドル円が100円台で推移した場合、主力輸出企業の業績は回復するだろうか。
答えは見えている。現在のように、今後も日銀のETF買いを背景に株価が下げずに堅調に推移すれば、結果として企業業績を基準とした理論値と株価の乖離がさらに大きくなる。つまり、割高との判断になる。しかし、日銀によるETF買いが入ることが分かっているため、これまで円高で日本株を売り浴びせてきた市場参加者は手を引いているだろう。しかし、とはいえ日本株を積極的に買うこともない。前回の本欄でも書いたように、人為的に操作された市場に参入することに対する見えないリスクを彼らはよく理解しているからであろう。
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