かつやvs.松屋、「カツ丼戦争」勃発! ロース肉増量で迎え撃つアークランド

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しかも、トンカツのような揚げ物系は、牛丼などに比べてオペレーションが複雑なために多店舗化が難しく、圧倒的なシェアを握る会社が出てきにくい。そうした事情も、他業態からは魅力に映る。

すでに牛めしの「松屋」を展開する松屋フーズは、トンカツ事業を今後拡大する方針を打ち出している。松屋フーズは2004年から「チキン亭」でトンカツを販売しており、現在は「松乃家」「松八」といった業態を中心に、33店舗(12年12月末時点)を展開する。

「トンカツはまだ出店余地が大きい。100店舗ぐらいは一気に増やせるはずと社内に発破をかけている」と松屋フーズの鈴木治夫専務は意気込む。

ロース肉増量や天丼育成などで迎え撃つ

カツ丼・トンカツ業界での競争激化を見越して、アークランドサービスは天丼「あきば」など、次の主柱となる業態の育成を進めるが、ようやく2店舗という段階だ。

一方で、足元で好調なカツ丼の競争力を高める施策にも注力している。

2月22日からは、「かつや」全店でカツ丼(竹)やロースカツ定食に使用する米国産の豚ロースを従来の110グラムから、120グラムへと約10%の増量に踏み切った。玉木芳春常務は「お客様への還元」とその狙いを説明するが、先行して増量することで差別化を図る狙いもありそうだ。

アークランドの今13年度は、こうした豚ロース増量に伴い原価が膨らむことに加え、持ち帰り弁当併設のために改装費用も増える。売上高145億円(前期比13.3%増)、営業利益21.8億円(同11.1%増)、既存店売上高横ばいの横ばいと、依然2ケタ増収増益ながら、前年度に比べれば伸び悩む見通しだ。

ただ、「顧客還元」も改装費用も、これまでの好調を持続するための先行投資と見るべきだろう。売り上げ規模でも店舗数でもアークランドサービスを大きく上回る、牛丼など外食異業態の参入を迎え撃つ態勢をどう築き上げるかが、当面の大きな課題となりそうだ。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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