トヨタが「できる人」を作る秘密の仕組み

マニュアルを超える「標準」の威力

このように、さまざまな教訓が織り込まれた「標準」。それ自体を作るのはそう難しくはありませんが、大事なのは「守っていく」ということです。

「標準」破りで大事件に

標準の遵守について、苦い思い出とともに大切さを実感したというトレーナーの高木新治のエピソードをご紹介しましょう。

トヨタというと生産性重視のイメージがあるかもしれませんが、実際には「一に安全、二に安全」と言われる位に安全が重視されています。生産現場では、ちょっとした不注意やミスが、ケガをする大事故につながるおそれがあるからです。

「過去の教訓が多く込められた標準やルールを破ることは、大きな代償を伴うと知った」と高木は語る

高木が課長時代のこと。高木の部下が階段の手すりを持たずに一段とばしで歩いていたのを、上司である部長が偶然目撃しました。現場では安全のために、手すりをもって一段ずつ階段を上るのがルールでした。そのため、部長は高木を呼び出して厳しく叱責し、こう言いました。

「キミの部下はなってない。キミのことも信用できない」

若い頃、トップダウンの上司のもとでメンバーが萎縮していた姿を目にしていた高木は、部下の自主性を重んじたいという気持ちを持っていました。ルールで縛ることは部下の自主性を抑圧するという懸念を持っていたので、高木はルール厳守を求める部長の姿勢に納得できませんでした。翌朝、120人の部下を全員招集し、管理監督者だけを連れて部長の元へ行き、辞表を提出しました。高木はその時のことを思い出して、こう振り返ります。

「課長職にあったので若気の至りというほど若くはなかったのですが、私は感情的になっていたのだと思います。部長に叱責された時、私のポリシーもすべて否定された気になって、思わず感情的な行動をとってしまったのだとあとになって反省しました。勿論、辞表はその場で破棄されました……」

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