トヨタが「できる人」を作る秘密の仕組み マニュアルを超える「標準」の威力

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それから2週間後、事件が起こりました。高木の部下が安全ルールを守らなかったことで、指に大ケガをしてしまったのです。部下は「これくらいは大丈夫」と思い、安全措置よりも作業を優先させてしまったのです。高木は自省の念を込めて、こういいます。

「遅きに失するとはこのことです。事故が起きてようやく私は、あの時部長が激怒した理由を理解しました。階段を一段飛ばしに上る部下をみて、安全ルールを守る意識が欠けていることを感づいていたのです。

結局事故に関しては、部長は私を責めることはありませんでした。しかし、二度と同じことが起きないよう、上司が毎日職場巡回をして、作業チェックをするという対策をとることにしました。部下の安全を守れず、職場全体にも迷惑をかけてしまい、私は改めてルールを守ること・守らせることの重要性を認識しました」

標準は作っただけでは意味がない。そこに込められた、数々の過去の失敗を思い、徹底して守り・守らせる努力をすること。

他人に教えることは深い理解が必要

標準を作り守らせることに加えて、当事者自身が標準を正確に理解しておくことも必要です。1つ目の盲点、「わかっているはず」に関するポイントをご紹介します。トレーナーの大嶋弘は、このように言います。

「私たちトレーナーが顧客先で指導をする際には座学から入りますが、口頭で伝えるだけではメンバーの理解度は3割程度と考えています。たとえば、トヨタ生産方式などの基本的なことを教える時。これはトヨタの従業員でもさまざまな体験を通じて数年をかけて習得していくもので、言葉で説明しただけでトヨタ生産方式になじみのないメンバーがわかるはずがないのです。座学で説明をして、現場で実践してもらい、基本的な説明に加えてトレーナー自身の体験談なども織り交ぜて再度説明することは基本。さらに可能であれば、教えたメンバーが別の誰かに教えている姿まで観察できれば、完璧にわかったと安心します」

誰かに教えるためには、自分で理解して完璧にできる以上に深い理解が必要です。このように、「座学+実践」に加えて「教え方を理解・アドバイス」というサイクルまで達することができれば、「わかっているはず」による失敗を防ぐことができます。

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