フラガール、風評吹き飛ばす 常磐興産、原発停止で石炭も返り咲く

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となると、斎藤社長の「来年度150万人」目標も現実味を帯びてくる。来2013年度は被災企業支援の動きに乗った団体客の集客はさすがに一巡する可能性もあるが、宿泊のキャパシティが大きく増えるため、その分、日帰り利用者数のカウントにもプラス要因となる。常磐興産では、同社のホテル施設に宿泊した場合、1泊につき日帰りの利用者1人分としてカウントしているためだ。

実は常磐興産では、震災前から建設を進めてきたホテル新施設「モノリスタワー」を、昨年2月開業。今年度に入ってからも、震災で被害を受けたホテル南館がようやく夏場に復旧を終えるなど何らかの工事が続き、すべての宿泊施設がフル操業態勢となったのは、昨年12月になってから。これが来年度は4月から通年でフル操業となる。宿泊施設のキャパシティは、震災前の1500人(1日当たり)から、2000人に拡大。それが宿泊利用者の増加のみならず、日帰り利用者のカサ上げにも貢献する。

原発停止で石炭も返り咲く

主力事業のスパリゾートハワイアンズだけでなく、意外な事業も返り咲いている。福島原発事故後に全国の原発が稼働を停止したことを受けて、常磐興産の祖業ともいえる「石炭」事業が活況となっている。

常磐興産の母体となった常磐炭鉱は1985年に採炭事業そのものは廃止したが、石炭・石油の卸売事業は、売り上げ規模だけ見れば、現在でもスパリゾートハワイアンズを含む観光事業を上回る、第2の主力事業となっている。その卸売事業が福島原発事故以降、主要納入先である電力会社向けに販売数量を伸ばしている。

原発稼働停止で火力発電所向けの石炭販売が大きく膨らんだためだ。東北電力や東京電力にも納入しているが、常磐炭鉱時代に設立され、現在は東京電力や東北電力も出資している「常磐共同火力」向けの納入が圧倒的に多い。火力発電の中では、天然ガスや重油よりも石炭のほうが発電コストが安いため、常磐共同火力はフル操業の状況だという。

会社側では今のところ、今2012年度は売上高453億円、営業利益14.6億円(12年9月発表の修正計画)、来13年度は売上高472億円、営業利益20.6億円(11年11月発表の新中期経営計画)と業績見通しを立てている。

フラガール効果をフルに生かして、どこまで業績の復興を前倒しすることができるのか。まもなく震災から2年を迎えようとする中、被災地経済の先行きを占う意味でも、常磐興産の復興がその試金石となりそうだ。

大滝 俊一 東洋経済 記者

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おおたき しゅんいち / Shunichi Otaki

ここ数年はレジャー、スポーツ、紙パルプ、食品、新興市場銘柄などを担当。長野県長野高校、慶応大学法学部卒業。1987年東洋経済新報社入社。リーマンショック時に『株価四季報』編集長、東日本大震災時に『週刊東洋経済』編集長を務め、新「東洋経済オンライン」発足時は企業記事の編集・配信に従事。2017年4月に総務局へ異動し、四半世紀ぶりに記者・編集者としての仕事から解放された

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