「選択と集中」が現段階では裏目に
一方、JALの貸借対照表にある「固定資産 航空機」を見ますと、2008(平成20)年12月31日は7421億円だったのが、2012(平成24)年12月31日には3699億円まで大幅に減少しています。JALはこの間、燃費の悪いジャンボジェット等の航空機を売却したのです。もちろん、JALも新型航空機B787を購入しましたが、ANAが17機所有しているとに対し、JALの保有数は7機ですから、運航停止による影響も、ANAの方が大きいのではないかと思われます。
ANAがこれほどまで航空機の購入に注力した理由は、いくつかあると考えられます。一つは、2009年にJALが経営難に陥った頃、JALの路線が縮小するという話がありました。そこでANAが路線を拡張させ、JALが空けた穴をカバーしたいという思惑があったのです。
同時に、羽田空港の第4滑走路ができたことも、路線拡張を後押しした要因の一つだと思われます。
次に、国際便の競争がますます激化して行くことを見据え、燃費の良い航空機を導入したかったということもありますし、元々、古い747型機などの航空機を新しい航空機に替えていきたいという考えもあったでしょう。
このような背景があって、ANAは選択と集中を行いました。先ほども述べたように全日空ホテルを売却して、その資金で増資して航空機を買い替えたのです。新型航空機B787にすべて切り替わったら、燃費効率が従来のものより格段に上がります。ANAはそれに賭けたのです。
しかし、皆さんもご存じの通り、度重なる事故によって利用停止となってしまったのです。これはANAにとって、想定外の事態でした。一方、JALは不採算路線から撤退したうえに、燃費の悪い航空機を全て売却してしまった。これが、JALとANAの明暗を分けた要因の一つとなったことは間違いありません。
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