「脱・偏差値」で広がる新型ストレスの正体 受験環境にもマインドフルネスが必要だ
死に至るような強いストレスをキラーストレスというが、それは教育現場にも広がっている。そこで米国ではこの事態を解決するための施策として、マインドフルネスを導入する教育機関が増え始めているという。
日本では米国エリート学生が患うようなダックシンドロームはあまり聞かれないが、新たなストレスが蔓延しようとしている。その要因のひとつになりそうなのが、今後予想される、進路指導方法の変化だ。
従来、日本の塾や学校では実態として、偏差値を基にした進路指導がなされてきた。学生本人がやりたいこととは無関係に、「あなたは成績が良いから医学部へ行きなさい」といった指導が当たり前のようになされてきた。
しかし、過去記事でもご紹介したように、国は教育改革を実行しようとしている。大学はどういう学生を受け入れるかという「アドミッションポリシー」、学生をどう育てるかという「カリキュラムポリシー」、どのような人材を輩出するかという「ディプロマポリシー」の3つのポリシーを決めることになっている。
これらは学生たちにとっても望ましい変化だろう。大学が求めるポリシーがわかれば、学生は、偏差値ではなく、自分のやりたいこととマッチする大学・学部を選べるようになるはずだからだ。大学に入ったものの、「こんなはずじゃなかった」ということが減る可能性がある。
すでに今、日本の教育界でも「やりたいことができる大学・学部を目指しなさい」「個性を発揮できる大学・学部を選びなさい」といった進路指導が主流となりつつある。
一方、こうした急激な変化によって、戸惑う学生は増えていくかもしれない。
「やりたいことが見つからない」という強迫観念
筆者は一昨年まで早稲田塾という関東圏で23校舎を展開する大学受験予備校を経営していた。早稲田塾は「受かるために学ぶのではなく、学ぶために受かる」という考えを持った塾であり、受験に直結しない内容のことも行なってきた。たとえば表現力を磨くワークショップや、日本を代表する大学教授のゼミを塾内で開いてきた。さらに、ハーバード大をはじめ、MITやコロンビア大など、海外名門大学の先進的な学びの場で独自のプログラムを実施している。
大人の目からすると、学生時代にそうした経験ができるのは将来の進路を広げるなどの意味で魅力的に見えるかもしれない。しかし実際は、それで「自分もやってみたい」と思う学生は例年、全体の20%ほどだ。
よく聞かれるのは「自分はやりたいことが決まっていないので、何をしたらいいか選べない」という声だ。筆者が見てきた限り、こうした心境は、いつしか焦りに変わっていく。「早くやりたいことを見つけなければ」という思いが、強迫観念のようになってしまうのだ。そしてストレスになることもある。こうした現象が今後、日本の教育改革の過程で起きる可能性があると筆者は感じる。
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