都知事選びの「判断基準」、どこに置くべきか

政治家にとって「コミュ力」は重要な能力

筆者は、エグゼクティブのプレゼンやスピーチのコーチングを行っている職業柄、多くのリーダーのコミュニケーションを間近に見てきたが、日本の政治家の演説に共通しているのは以下の3つの特徴だ。

① 絶叫系
「どうか皆さん、力をお貸しください!」。あらん限りの声を出し、連呼、絶叫する。大きい声=力強さ、だと勘違いしているようで、徹頭徹尾、同じトーン、同じリズムで叫んでいる。
② オレオレ系
「私はこれをやります」「私はこれまでこんなことをやってきました」。自分の実績と手柄、抱負をアピールしたいと、自慢ショーを繰り広げる。
③ 一人語り系
聴衆の関心や属性に関わらず、どこでも同じような話を一方的に話し続ける。聞き手が興味を持とうが、なかろうがお構いなく、自分の話したいことだけを「聞かせよう」とする。

 

なまじ場数は多いので、「自己流」で「うまくなった気」がするらしく、鉄板の受けネタをマスターし、地元のおじいちゃん、おばあちゃんを沸かすことぐらいができるぐらいになると、「これでよし」と自信をつけてしまう。ひたすら弁論の腕を磨き、コミュニケーションで人々の心を揺さぶり、かき立てることに死力を尽くす欧米の政治家に比べると、実に寒々しいレベルなのだ。

イギリスのテリーザ・メイ首相の就任演説

ここで、最近話題のイギリスの新女性宰相、テリーザ・メイ氏の就任演説をご紹介したい。胸の谷間がセクシーでドキッとさせる、さすが「おしゃれ番長」だが、低音で迫力のあるスピーチはなかなかの貫禄だ。

今、仕事があっても、常にその保証があるわけではない。家を持っていても、ローンを払い続けられるか不安に感じてしまう。何とか食べていけても、生活費のことや子供をいい学校にやることができるか、心配してしまう――。もし、あなたが、こんな風に何とかぎりぎりでやっている、そういう一人であれば、私はあなたに直接語り掛けていきたいのです。
24時間、絶え間なく働いているんですよね。ベストを尽くしているのもわかっています。そして、人生が時に苦難の連続であることも。私が率いるこれからの政府はごく少数の特権階級の利益に突き動かされるのではなく、あなたの利益を守るためにあります。あなたが、自分の人生をもっと自分の力で決めていくことができるよう私たちは、あらゆる策を尽くします。
(演説の一部。筆者訳)

 

 

ここで気づくのは、I(私は)という主語が圧倒的に少ないことだ。You(あなた、あなた方)もしくはWe(私たち)がほとんどだ。わずか5分弱のスピーチで、Iは11回、Weは24回、Youに至っては32回も使っていた。格差の拡大、世代間の価値感の隔たりが先鋭化し、国としても分裂の危機にある中で、連帯感を高めたい、という意図もあるだろう。

しかし、政治は何より、国民のためのものであり、一部の特権階級を利し、政治家の私利私欲や自己顕示欲を満たすものではない、ということを訴えたかったのではないか。「絶叫」も「俺様系の主張」も、「一人語り」も徹底的に排除し、とことん有権者に寄り添うメッセージがじんわりと心に残る。

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