「部下のマネジメント」は究極のムダである 1人だけで仕事をする構造作りが重要だ

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塩野:経営者にも、どうせ新しいこと始めるんだから、真っ白の人のほうがいいという人はいますね。

米倉:でも結果的に、一人でできたことが10人になっても全然できなかったんです。

塩野:10倍になるはずなのに、なんでダウンしちゃったんだろう状態。

米倉:社員とまったく話も通じませんし、3年くらい「なぜうまく回らないと」思いながらやっていました。

塩野:ご本人も「なぜ成長しないか」が、わからないままやっていたと。

マネジメントに向いてない自分を痛感

米倉:自分の仕事はきちんと走っていたのに、なぜ他のメンバーの仕事はそうならないのかが理解できなかった。基礎となっている思考回路が人それぞれバラバラだというのが、一人でやっていたのでわからなくなっていて。

塩野:一人でやっていれば、すべてそれは自分のコントロール下にあるということですからね。

米倉:自分は変化できるけど、人が変化するのが難しいというのがわかりませんでした。

塩野:苦節の3年間でしたね。

米倉:そこから勉強して、「経営者とは何ぞや」と、本を読んだり、いろいろな人の話を聞いて、エイチームの林さんにも話を聞いたりということをやりながら、マネジメントについて学びました。会社は成長して、3年目で10人、2014年の事業売却までに100人くらいまで成長させたんです。

塩野:コンテンツ企画がメインですか。

米倉:ソーシャルゲームのグラフィックとか電子書籍を作ったりしていました。主に受託ですね。

塩野:実力派の受託企業ですね。

米倉:ただ、僕の頭の中では完全に乖離していて、一人でやっていたパフォーマンスと、いまのパフォーマンスを常に比較してしまいました。
さらに会社として世の中に出している表現力というものが、サービスとしてではなく、存在としてのインパクトをまったく感じられなかった。

塩野:作品ベースのインパクトが表現できなかったと。

米倉:はい。そこが僕の中でずっと課題で。社会に対して何を残すかを考えていましたが、クリエーティブ性を感じなくなっていって、僕はマネジメントに向いてないと思いました。

そんな人間が作る組織体は表現として間違っているんじゃないかと感じたんです。僕が伝えたかったのは個人への影響。組織で働いている個人にインパクトを与えたかったのに、その思いがぶれてきた。そこで、事業売却をして個人の仕事に戻るかを悩み始めたんです。本当にどうしようか悩み抜いていました。

塩野:それで事業を売却して個人に戻った。100人規模まで成長させた企業を捨てて、個人に戻るのはすごい決断ですね。

(構成:高杉公秀、撮影:尾形文繁)

後編は8月3日に配信します。お楽しみに!
塩野 誠 経営共創基盤(IGPI)共同経営者/マネージングディレクター JBIC IG Partners 代表取締役 CIO

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しおの まこと / Makoto Shiono

国内外の企業への戦略コンサルティング、M&Aアドバイザリー業務に従事。各国でのデジタルテクノロジーと政府の動向について調査し、欧州、ロシアで企業投資を行う。著書に『デジタルテクノロジーと国際政治の力学』(NewsPicksパブリッシング)、『世界で活躍する人は、どんな戦略思考をしているのか?』(KADOKAWA)等、多数。

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