おカネがおカネとして流通しているのは、「皆がそれをおカネだと信じているから」にほかならない。もしも、おカネが信用できなくなれば、経済は崩壊する。そういう危ういものの上に乗っかって、われわれの暮らしは成立している。
白川総裁の辞任表明は、日銀の「正常化プロセス」
このところずっと話題になっている日本銀行総裁の人事だが、このポストをもてあそぶことは、われらが通貨である「円」に対する信認を危うくするものである。巷間、とんでもない人の名前が聞こえてくるたびに、「日銀擁護派」である筆者は背筋が寒くなる思いでいる。
「タケXXさん」くらいは思考実験のうちだけど、「タカXXさん」はいくら何でもないでしょう。いや、そういう事大主義的な発想が、デフレを深刻化させてきたのだという批判があることは承知しておりますけどね。
さて、白川総裁は自分の任期が切れる4月8日ではなく、副総裁2人の任期に合わせて3月19日に辞任することを表明した。その理由、筆者はわかる気がしている。これはおそらく日銀なりの「正常化プロセス」なのである。
もともと日銀の正副総裁は、3人セットで3月20日に就任するものだった。これは1998年の新日銀法施行から始まったサイクルで、このときは不祥事の責任を取って松下康雄総裁が辞任し、外部から戻った速水優総裁が就任した。そして2003年3月20日はイラク戦争が勃発した日だが、この日に発足したのが福井俊彦総裁であった。
ところがこのサイクルは、2008年の総裁人事で崩れてしまう。当時、参議院で多数を占めていた「小沢一郎・民主党」(当時)が、国会同意人事で反対を連発したからである。そのために総裁の不在期間ができてしまった。つまりは総裁ポストが政争の具にされたわけで、日銀サイドから見れば途方もない暴挙ということになる。今回の白川総裁の決断は、これを本来の姿にそっと戻す、という意図があったのではないかと思う。
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