「い・ろ・は・す」を20億本売った”女マネ” 新世代リーダー 小林 麻美 日本コカ・コーラ マネジャー

拡大
縮小

しかし、それからが、長かった。「コンセプトは決まりましたが、従来からのミネラル・ウォーターの世界観に縛られているのは、開発チームの私たちでした。」

販売の前年の秋、日本コカ・コーラでは、販売を手掛ける日本全国のボトラー各社を呼んで、新製品発表会をする。その壇上で発表者が掲げたPETボトルには、無地のラベルが貼られていた。ブランド名すらない。デザインも何も決まっていなかった。

会場中からは「疑念の視線」が集まった。「どうしようかと思いました・・・発表できるものが、容器以外ほとんどなかったわけですから」

しかし、次の瞬間、壇上で発表者がPETボトルを手でぎゅっと絞ってみせると、会場からは歓声があがった。「エコを目に見えるアクションに落とし込む“エコの可視化”に成功したと、自信を持つことができました」

とはいえ、発表会にブランド名すら決まっていないのは異例のこと。「完全に煮詰まっていました。どういったブランドにしたいのかを再度確認するため、ワークショップを開き、一からみんなで話し合うことにしました」ワークショップを開いたのは年の瀬の08年12月24日、クリスマスイブも話し合いについやした。しかし、それでも決まることはなかった。

12月25日。すでに休暇に入っているメンバーもいた。小林さんたちは、もう何度繰り返したかわからない、話し合いの場所を変えることにした。休暇中のメンバーの家に押しかけることにしたのだ。

実は、ブランド名に「いろはにほへと」の「いろは」を使いたいということは候補に上がっていた。だが、そこからなかなか前に進まなかった。ブレイクスルーのヒントは、意外なところから生まれた、「メンバーの家で話しているときに、ちょっと席を離れていたメンバーが『すー』と言って、話し合いの場に帰ってきたんです。」

物事の基本を示す「いろは」という言葉と、環境に良い「ロハス」。この2つを組み合わせた「い・ろ・は・す」というブランド名が生まれた瞬間だった。平仮名であれば、子供にも高齢者にも、分かりやすい。「みんなで『これだっ!』と言って、やっとブランド名が決まりました」

次ページブランドを具体化する作業がついに始まった!
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT