大気汚染が、中国のクルマ市場を変える? 苦戦する日本車メーカーが生きる道

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ニッポンブランド、反転攻勢へ

うれしいニュースは、2012年度の世界市場でトヨタが首位に返り咲いたことです。実に22.6%増の974万7762台というものすごい数字です。トヨタといえば、レクサスに導入している「スピンドルグリル」と呼ばれる精悍なフロントマスクや、昨年発表された新型クラウンの大型フロントグリルにピンクの新色など、思い切ったデザイン施策が話題になっています。

世界最大のクルマメーカーが保守的になることなく攻めの姿勢を貫いているのはすばらしいと思います。社用車として使われることも多い高級セダンに派手なフロントグリルを与える必要があるのかという議論はあるでしょうし、日本人の好みとしては以前のレクサスのような抑制された美しさ(英語ではunderstatementという言葉がぴったりします)のほうがよいのでしょう。

しかし、グローバル高級車市場でドイツ車相手に戦うためには、性能だけでなくデザインにも力強さのエレメントが必要ですし、日本国内でもブランドの活性化につながると思います。また、たとえば中国のお金持ちから見れば、自分のステータスを象徴してくれる押し出しの強いデザインは大歓迎でしょう。アウディも以前はおとなしかった外観が近年とみにいかつくなってきています。

エコカー需要が急速に高まるはず

この原稿を書いている今も北京の大気汚染は深刻で、外に出ると100メートル先の視認もおぼつかないほどです。最近では視界不良で高速道路が閉鎖されるので、われわれが天津開発区のクライアントに赴くときはクルマをあきらめて電車を利用しています。北京以外でも全国的に発生している異常なスモッグへの対応は喫緊の課題です。

原因のひとつはクルマの排気ガスだとされていますから、毎年2000万台近くの新車が工場から道路へと吐き出されるこの国では、エコカーの需要が急速に高まる可能性が大きいと思います。政府の号令一下、一斉に環境最優先へと運輸・交通政策が切り替わる日が程なく来るかもしれません。

環境対策として「クリーンディーゼル」エンジンを柱としている欧州メーカー、ハイブリッドエンジンの性能を高めている日本メーカー、電気自動車の開発を急ぐアメリカや中国のメーカーが急拡大する環境ニーズにどう対応するのか、中国が世界最大の実験場になる予感がします。

岡崎 茂生 フロンテッジ ソリューション本部副本部長

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おかざき しげお / Shigeo Okazaki

1981年東京大学教育学部卒業、1989年ピッツバーグ大学経営大学院MBA。1982年電通入社、2006年より北京駐在。北京電通 ブランド・クリエーション・センター本部長を経て、現職。30年におよぶ広告・マーケティング領域での経験をベースに、中国企業をはじめタイ、アメリカ、韓国、日本企業などを対象に幅広くブランド戦略コンサルティングを行なう。アジア各国およびアメリカの大学/大学院でのブランド講座・公開セミナー、フォーラムでのスピーチ、雑誌連載など多数。チュラロンコン大学商学部マーケティング学科客員准教授、南京大学ジャーナリズム&コミュニケーション学院客員教授、湖南大学ジャーナリズム・コミュニケーション&映像芸術学院客員教授。

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