大気汚染が、中国のクルマ市場を変える? 苦戦する日本車メーカーが生きる道

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反日デモ以前からのダウントレンド

私自身は、日本メーカーの実力はこんなものではないと思っていますが、昨年9月に不買運動が発生する以前から日本メーカーの販売が伸び悩んでいたのも事実です。ですから、日本車の不振は外交問題を隠れみのとするわけにはいきません。

具体的に中国の売れ筋車種を見てみると、車種別販売台数トップ10の内訳はシボレー2車種、ビュイック1車種、フォルクスワーゲン5車種、ヒュンダイ2車種となっています。第1位のシボレー「Sail」をはじめ、すべてお手頃価格の小型セダンです。本来、コンパクトカーは日本メーカーの得意分野だと思いますが、このマーケットでグローバルブランドに売り負けているのです。

小型車セグメントは利益貢献は薄いかもしれませんが、まだまだモータリゼーション発展途上の中国にあっては、エントリーマーケットとして重要です。クルマを初めて買う若い世代を吸引してブランドのファンへと育てていくことは、中長期の事業戦略上、大変重要です。

高級車市場はまだ伸びる

一方、高級車は利幅の大きさもさることながら、フラッグシップ車種として企業ブランド全体への貢献が求められるセグメントです。中国の高級車市場はアウディ(2012年度は対前年29.6%増の40万5800台)の独壇場でしたが、39.7%の驚異的な伸びを見せたBMW(30万3200台)が追撃しています。

このマーケットは公用車やカンパニーカー需要が大きく、古くからA6LやA4Lなどのロング・ホイールベース仕様車を売ってきたアウディが稼ぎまくっています。後部座席でふんぞり返っていたいユーザーのニーズにいち早く対応したおかげです。

やや出遅れたメルセデスは前年比4%増の20万6150台と依然として苦戦していますが、先日メルセデスのディーラーに勤務する中国人の友人と食事をしていたら、1時間半ほどの間に2件の引き合いの電話がありました。

彼いわく、「最近はCクラス、Bクラス、GLKなどファミリーユースも増えていて引き合いは多いけれど、春節直前の今はもうディーラー在庫が少ないし好みの色も用意できないからお断りせざるを得ない」とのこと。昨年から、金額を聞くとびっくりするような値引き販売によって販売台数を伸ばしてきたようです。

役人や国営企業幹部に贅沢自粛令が出ているとはいえ、この国の高級車市場はまだ伸びると思われます。レクサス、インフィニティ、アキュラの健闘に期待したいと思います。

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