出光家が今になって合併反対を主張するワケ 株主総会で代理人の浜田卓二郎氏が反対の弁

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会社側は否定するが、これまでは第三者割当増資で、創業家の議決権を希薄化する強硬手段もあった。が、機関投資家などの動きが読めなくなり、打つ手は限られてきた。決裂すれば、臨時株主総会で、委任状争奪戦に突入する公算もある。銀行や経済産業省幹部からも「なぜ事前に説得できなかったのか」と出光へいらだちが高まっている。

7月11日午後からは、出光興産本社と同じ建物にある出光美術館の館長室で、トップ会談が行われる予定。創業家側から昭介氏と浜田氏、会社側から月岡社長が同席するもようだ。常々、「経営統合で出光の精神は失われない」と強調してきた月岡社長だが、昭和シェルとの合併の大義は昭介氏に響くか。にらみ合いは頂点に達している。

「出光と昭和シェルとは企業体質が違う」

弁護士・日章興産副社長/浜田卓二郎

浜田卓二郎(はまだ たくじろう)/1941年鹿児島県生まれ。1965年に東京大学法学部卒業後、旧大蔵省入省。1980年に衆議院議員初当選。2004年から弁護士として活動し、2014年から日章興産の顧問弁護士を務める

──なぜ今になって出光家は経営統合に反対表明をしたのか。

2015年11月に発表された基本合意書を読んでびっくりした。「対等の精神に基づく統合」など、調子のいい話が書いてあったから。中東情勢の変化を深刻に受け止め、合併を延期するなり、もう一度話し合いをするなりがあってしかるべき。企業体質の違う昭和シェル石油と合併するのは火中の栗を拾うようなものだ。

行政は合併で数を減らせばいいという発想が基本にある。が、こういう合併が短期間で功を奏し、出光興産は石油業界の危機に対応できるのか。

──現経営陣とのやり取りでは何が納得いかないのか。

1月29日の意見交換の場では、「再編の波に乗り遅れるぐらいのことで合併を判断すべきではない」と、月岡隆社長に申し上げた。未来永劫、合併させませんとか、創業家のわがままとか、横車を押そうとかいう話では、まったくない。企業経営を考えると必要なのは、創業時からの出光のように、労働組合がなくて自由闊達な意見交換ができ、即座にいろんな事態に対応していけることだ。

(公益法人である出光文化福祉財団と出光美術館の議決権が有効か見解が割れているのに対し)今回手続きに齟齬(そご)があったとは思っていないが、次の臨時株主総会までには、きっちり手続きを取る。

──合併ではなく、昭和シェルを子会社化するなら、納得できるのか。

できないと思う。手段の問題でなく、出光の命運にかかわる経営論の話だ。私どもはむしろ、対話を望んできたわけだから、対話で解決できるなら一番。だが中途半端な対話は無理だ。

ロゴマークや出光の名前をどうするかといった、そういう条件の話し合いではない。経営問題として合併にはあくまで反対と、月岡社長には申し上げたい。

 

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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