出光家が今になって合併反対を主張するワケ 株主総会で代理人の浜田卓二郎氏が反対の弁

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会社側は「創業家と適切にコミュニケーションを取っており驚きを隠せない」と説明する一方、創業家側は「寝耳に水と言われるのは心外」と認識の隔たりは大きい。

昭介氏と経営陣。かつても上場をめぐって対立があったが、今回の確執の発端は、少し前にさかのぼる。供給過剰で再編圧力の強かった石油業界では、2014年夏前から、水面下で出光と英蘭シェルが交渉。その後、出光と昭和シェルが2015年6月に正式表明し、同年11月に合併を基本方針とする基本合意を結んだ。

若かりし日の出光昭介氏(1984年撮影)。現在は名誉会長。合併のカギを握っている

ところが、基本合意書に書かれた「対等の精神での統合」に、昭介氏は違和感を覚えたようだ。前述の二つの理由に加え、昭和シェルとの合併によって、創業家の影響力が落ちることへの懸念も強い。対等合併が進めば、結果的に創業家の出資比率は下がる。2015年12月には、昭介氏自らが出光の月岡隆社長に連絡を取り、面会を求めた。

会社側は多忙を理由に応じていなかったが、1月29日に30分の会談が実現。ただ、合併のメリットを説いた2~3枚の資料での説明に創業家は納得いかず、物別れに終わる。その後、両者の連絡は途絶え、株主総会が近づき、焦った創業家が5月23日に再度書面を提出したが、そこでも明確な回答はなかった。

決裂すれば委任状争奪戦に突入

昭介氏は株主総会直前まで「かつての部下とけんかしたくない」と慎重だった。が、元衆議院議員で2014年から日章興産の顧問弁護士を務める浜田卓二郎氏が、「株主として発言できる最後の機会です」と後押し。総会での発言権を得るため、浜田氏自らが日章興産の副社長に就任、“代理人”として冒頭の反対表明に至る。まさか総会で創業家が反対すると思っていなかった経営陣には大誤算となったのだ。

さらに会社側に追い打ちをかけたのは、6月30日に判明した取締役選任議案の開票結果である。月岡社長への賛成票は52%と再任に必要な過半数ギリギリ。棄権票を除き、逆算すると、創業家の39%以外に9%の反対票があった。米議決権行使助言会社ISSが、平均ROE(株主資本利益率)の低さを理由に取締役再任への反対を推奨しており、これに外国人投資家らが応じた可能性が高い。

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