その結果、91年に22.1万戸あった肉牛生産農家は、2010年には7.4万戸と約3分の1に減りましたが、1戸あたりの飼育頭数は平均で12.7頭から38.3頭へと約3倍に増えています。明らかに生産性が高まり、海外の牛肉と対等以上の競争ができるようになったのです。
オレンジについても同じで、当初は「日本のオレンジ農家を消滅させるつもりか」と強硬に反対していた国内オレンジ農家は、その後に生産性の効率化を図り、さらには質の向上、安全性の向上などによる差別化を進め、その競争力を高めることに成功しています。
もちろん、すべての農家の競争力が高まり、収入が増えたわけではありません。競争の過程で敗れた農家は、市場から退出を迫られることになりましたが、これは資本主義の競争原理ですので、ある程度はやむをえないことでしょう。しかし、競争力の向上が望めない農産物については、韓国が行った例を参考にするとよいでしょう。
韓国では、欧米とのFTAを締結するにあたって、自由化に反対する農家に対し、13年までに120兆ウォン(約8兆4000億円)の補助金を投じることを決めました。
しかし、これは単なるバラマキではなく、農産物ごとに自由化の影響を細かく分析し、競争力の向上が見込める品目に対して重点的に支援を行ったのです。そして、分析の結果、生き残りが難しいと判断された品目を生産する農家に対しては廃業支援金を用意し、いわゆる「選択と集中」をはかってきました。その結果、韓国の11年の農産物輸出額は約77億ドル(約6300億円)と、わずか4年間でほぼ倍増するまでに成長することができました。
次回は、観光の驚くべきポテンシャルについて述べる予定です。
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