農業は川下から変わる、ブランド構築、情報化が農家を強くする《農業を変えるビジネス革命》

7月中旬の平日午前中、都内のイトーヨーカドーの青果売り場。70代の主婦が、野菜の品定めをしていた。手に取ったのは、プライベートブランド(PB)の「顔が見える野菜。」だ。一般の商品より多少値が張るが、「年を取ると大量には買わない。少し高くても、安心できる商品を食べられる量だけ買ったほうがいい」と評価する。

「顔が見える」シリーズの品ぞろえはトマト、キャベツなど野菜から、桃などの果物まで、幅広い。一品一品に、農家の似顔絵を描いたシールが張られているのが目につく。

通常、農産物はJA(農業協同組合)を通じて産地ごとに集荷され、卸売市場に持ち込まれる。そのため消費者が知ることのできる情報は、せいぜい産地名くらい。ヨーカドーは農家と直接取引することで、商品の「見える化」を行った。国産農産物の「適地適作」に取り組む生産者を厳選、栽培方法など生産情報をホームページで開示する。農薬の使用回数も一般の半減を目標とし、各プロセスは第三者機関の監査を受けている。

2002年5月の野菜を皮切りに果物、肉、魚や卵に品目を拡大。食の安全を求める消費者からの支持を広げてきた。現在では、ヨーカドーの店頭に並ぶ青果物(野菜・果物)のうち、卸売市場を通さない「産直取引」は65%(うち約3分の1が「顔が見える」シリーズ)。店舗近隣の農家から直接調達する「地場取引」も15%ある。卸売市場からの調達は全体の2割。小売業界では平均的に6~7割が卸売市場からの仕入れだとみられ、ヨーカドーは異色の存在だ。

小売りと農家が近づくことで、消費者の嗜好をフィードバックしやすくなる。「顔が見える」ブランドを立ち上げた青果部の恵本芳尚シニアマーチャンダイザーは、「時には農家に売り場に立ってもらう。たとえば、最近の消費者はキャベツでも一個丸ごとでなく半分の購入を好むという現実を見てもらい、商品開発に役立てていただいている」と言う。

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