農業は川下から変わる、ブランド構築、情報化が農家を強くする《農業を変えるビジネス革命》
すでに「みずほの村市場」の店舗で売られている作物と同じ種類の作物を売りたいなら、必ず先発の商品よりも高い価格をつけなければならない。さらに、年間最低360万円の販売目標も課せられている。
だから「みずほ」の農産物は、食品スーパーに並ぶ商品と同程度かやや割高。それでも休日は午前から駐車場が満杯だ。茨城だけでなく、埼玉や東京からも車で客が訪れる。
農家は直売所に出品手数料を支払うが、商品の販売価格や売り方は自分で決められる。そのため農家の手取りが売り上げの80~85%と大きい(卸売市場経由では35~40%)。ただし、原則として農家自身が野菜の規格判別や袋詰めまで行わなければならないため、負担も重くなる。だから、高値で売ってこそ意味のあるビジネスなのだ。
「高値出品ルール」があるかぎり、価格競争の消耗戦には巻き込まれずに済むが、高値で売るには、顧客に買いたいと思わせる相応の差別化が必須。「みずほ」では店内の至る所に試食コーナーが設けられており、食べた客には味の違いが如実にわかる。農家は生産技術を向上させ、農作物についての情報を顧客に伝えることで、農作物のブランディングを図る。その商品が自分の決めた価格で顧客に受け入れられるか、直売所の店頭ではすぐ答えが出る。
より外食や小売りが強くなる時代が来る
圧倒的に規模で勝る小売り大手との直接取引は、農家にとっていいことづくめではない。決められた期日に一定の量と規格で納入が求められる。中には、表向きでは価格は長期固定といいつつ、実際には頻繁に値下げを要求するスーパーもある。大口契約を切られれば、いきなり販売先に困ることになりかねない。産地の分散や、比較的契約期間が長い外食との取引開拓など、リスクを抑制する取り組みが不可欠だ。