農業は川下から変わる、ブランド構築、情報化が農家を強くする《農業を変えるビジネス革命》
農家にとっても、直接流通から得られる成果は大きい。最大のメリットは販売価格の乱高下が抑えられることだ。
直接取引により価格リスク抑制
卸売市場は基本的に農産物をすべて引き取ってくれるので、農家が売れ残りを抱える心配はない。一方、市場での流通量次第で価格は大きく変動する。これは農家がコントロールできないリスクだ。ヨーカドーは農家と価格契約を結んでおり、このリスクを抑え込んでいる。市場経由だと売り場に並ぶまで時間がかかるうえ、温度管理が一定しないといった問題もある。直接取引の場合、卸売市場に支払う販売委託手数料(売価の8・5%)が必要ないため、農家の手取りは大きくなる。
ヨーカドーとの取り組みで先駆けたJA富里市(千葉県富里市)は、10年ほど前からヨーカドーをはじめ大手スーパーや地元スーパーへの販路開拓に注力してきた。11年の売上高72億円のうち、約4割が直販によるもので、これはJAの中ではかなり高水準。08年には農業法人「セブンファーム富里」をヨーカドーと共同設立、関係を強化してきた。
首都圏という一大消費地に近く、鮮度がよい野菜を届けられることが富里市の売りだが、「たとえば“甘いトマト”のような商品に比べれば、まだアピール力が弱い」(JA富里市営農部直販開発課の國本幸雄課長代理)。安定的な大口の販売先確保には、価格交渉に負けない差別化要因が必要になる。
JAの外でも、農家が集団となって大口取引を開拓する動きが各地で出ている。茨城県の農家が結成した「いばらき農産物流通研究会」では、いなげやなど食品スーパー向けの青果PBで年間3億円の売り上げを実現している。会員は、日本GAP協会が定める農場管理の認証「J−GAP」を取得した農家だ。いま中堅以下のスーパーでは、この認証を持つ農家を直接取引の対象として囲い込む動きが活発だという。