デジタル家電などの単純な製造業の技術は簡単に模倣され、もはやコスト競争の面でアジア勢には勝つことが難しくなっています。それに比べて、農業は簡単には真似ができません。味も品質も、日本レベルの野菜を作ろうと思ったら、長い時間を要することになります。日本の農業にはそれだけの蓄積があり、諸外国が容易には追いつけない分野なのです。
つまり、日本の農業はものすごいポテンシャルを秘めています。日本の農業は人口が減少していく国内市場を相手にするだけでは、この先どうしても限界に直面してしまいます。そうであるならば、自動車と同じように、農業も世界の市場に出ていくべきなのです。これから富裕層や中間層が最も増えるアジア地域を中心に、欧米や中東などにも輸出を拡大していくことで、有力な成長産業となる可能性を秘めているのです。
他の農産物も牛肉とオレンジの成功に学ぶべき
そのためには、関税を撤廃するなど、農産物の輸出入を完全自由化することが必要です。大規模化でコストを下げ、生産性を上げることさえできれば、品質の高い日本の農産物は世界で勝てる可能性が高いと言えます。生産性を上げるだけでなく、ブランドを獲得した牛肉やオレンジの例から学ぶべきことも多いでしょう。
91年にGATTのウルグアイ・ラウンドで、貿易自由化された日本の牛肉とオレンジが、自由化という荒波を乗り越えて競争力を高めることができたことは、日本の農業にとって示唆するところが大きいと言えます。
当時、国内和牛農家の多くが、輸入牛肉に対抗するには価格ではなく品質で対抗するしかないと考えて、高級黒毛和牛の生産へと切り替えを進めました。それと同時に、規模の拡大もはかり、生産性を高める努力も怠りませんでした。
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