前回のコラムでは、過度な金融緩和が経済の悪化を招き、デフレ脱却が進まないどころか、結果として国民を苦しめることになる点を述べました。
ところが安倍新政権は、日銀に対していっそうの金融緩和を迫り、日銀法の改正まで視野に入れているようです。
金融緩和の本来の目的とは何か
しかし、いくら日銀が大規模な金融緩和に踏み切り、インフレが達成できたとしても、国民の所得は思うように増えず、生活がいっそう苦しくなる可能性が極めて高いことは、前回、指摘させていただいたとおりです。
金融緩和の本来の目的は、銀行の貸し出しを増やし、中小企業を中心に企業活動を活性化させることにあります。それによって、国民全体の所得を押し上げ、「所得の増加→消費の拡大→物価の上昇」という健全な経済成長のプロセスを取り戻すことにあるのです。
したがって、金融緩和の目的自体は間違いなく正しいのですが、目的を達成するための手段としては、適切とはいえないのです。
もちろん、私は、銀行がすべての中小企業におカネを貸すように言っているわけではありません。生産性の低い企業や死に体の企業が淘汰されるのは、仕方がないことだと考えています。
そういった企業を無理に延命させても、銀行の不良債権が増えるだけでなく、経済の新陳代謝も進まず、新しい産業への投資が生まれてこないからです。
日本はバブル崩壊以降、生産性の低い産業や企業を政治的配慮からできるだけ延命させてきました。その結果として、日本の潜在成長率は1990年の2.5%から現在の0.7%まで大幅に下がってしまいました。
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