衆議院選挙の公約として、自民党、日本維新の会、みんなの党など主要な政党は、デフレ脱却のために、日銀に対して大規模な金融緩和を求めています。日銀に対して最も強硬な姿勢を取っている自民党の安倍晋三総裁は、日銀法の改正も視野に入れた無制限の金融緩和、2%のインフレターゲットの設定、日銀当座預金へのゼロ金利やマイナス金利の導入などを主張しています。
デフレの本質を見誤るな
しかしながら、日本経済が長いデフレの状態にあるからといって、現状で2%もの物価上昇を目指す金融政策が本当に正しいと言えるのでしょうか。何よりも重要なのは、デフレの本質的な原因を見誤ってはならないということです。本質を見誤ってしまうと、間違った対処方法を行い、デフレは解消されたとしても、国民生活をいっそう苦しくしてしまいかねないからです。
日本経済は1999年より、物価が継続的に下落する「デフレ」に陥りました。消費者物価は2007年から08年にかけて一度だけ上昇に転じたものの、ほぼ一貫して物価が下がり続けている状況にあります。日本の消費者物価は98年をピークに下落を続け、現在ではピーク時よりも4%も低い水準にあります。
デフレが続くと、経済は「物価の下落→所得の減少→消費の減少→物価の下落」という悪循環が起こると言われています。これが「デフレスパイラル」と呼ばれるもので、日本が長期停滞から脱せない原因は、このデフレスパイラルを断ち切ることができないからだと言うのです。
しかし、私はこのデフレスパイラルの説明が、順序立てとして、大きく間違っていると考えています。その理由として私は、日本をデフレに陥らせている最大の原因は、国民の所得が下がり続けている点にあると見ているからです。
つまり、「物価の下落→所得の減少→消費の減少」という順番は誤りであり、「所得の減少→消費の減少→物価の下落」がデフレを説明するうえでの正しい順序なのです。
これは、「鶏が先か、卵が先か」といった問題と同列にはできません。あくまで原因が先で、結果は後に来なければならないからです。
給与所得者の平均年収が下落し始めたのは98年、消費者物価指数が下落を始めたのが99年ですから、この2つの統計の時系列は、原因と結果の関係を見事に示していると思われます。
デフレの本質は、国民の所得が下がり続けていることです。デフレを克服するために間違った対応策を取らないように、この本質を多くの国民が認識する必要があります。経済が成長に向かう正しい順序は、「所得の増加→消費の拡大→物価の上昇」というプロセスで生じなければなりません。
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