安倍総裁の要請で日銀「物価目標」見直しへ 日銀と新政権の溝は埋まるか
1%の目途か、それとも2%の目標か――。物価見通しをめぐる日本銀行と新政権の溝。日銀が"歩み寄り”の姿勢を示した。12月20日の金融政策決定会合で10兆円の追加金融緩和を決めるとともに、「物価安定」の考え方について、執行部で検討し13年1月の政策決定会合に報告するように指示した。
12年2月、日銀は中長期的な物価安定について「消費者物価指数の前年比上昇率が2%以下のプラスの領域で、当面は1%を目途」と発表。事実上のインフレ目標を導入し、強力な金融緩和を進めると宣言した。
だが、先の総選挙で大勝した自由民主党の安倍晋三総裁は、11月下旬の講演で「目標と書けば責任が伴う。目途は予測にしかすぎない」と日銀流の表現を批判。政権公約には「物価目標2%を政府・日銀の協定で定める」と打ち出していた。
選挙後、素早く動いた安倍総裁
安倍総裁の選挙後の動きは早かった。12月18日、安倍総裁を訪ねた白川方明総裁に対し、物価目標2%の政策協定の締結を求めた。日銀は、この要請と、物価安定の目途を定めた際に1年ごとに点検すると決めていたため、次回会合までにそのあり方を検討することになった。
11月の会見で白川総裁は日本のバブル期のインフレ率が2%に満たないことを挙げ、物価見通し引き上げには慎重な姿勢を示していた。しかし、今回の会見では「あらためて1月に結論を出したい」と変更に含みを持たせた。
インフレ目標を設定した金融政策について、目標数値よりも実際のインフレ率が上振れると金融引き締め、下ぶれた場合には金融緩和に動くといった機械的な運営をするものではないことを白川総裁は強調。また、「(インフレ目標を基にした)フレキシブルな政策運営がなされるとの理解が深まれば、『目途』か『目標』かといった議論は意味がなくなってくる」(白川総裁)とも話している。
安倍総裁の言いなりにならずとも、たとえば、「1~2%を目標とする」など、13年1月の金融政策決定会合では「物価安定の目途」の数値や表現が見直されることになりそうだ。従来の「1%目途」を「2%目標」に変えたとしても、それは政府と日銀が目標を共有しただけ。デフレ脱却というゴールが近づくわけではない。
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