今後の海外戦略:WWEに学ぶべし
キム:話は変わりまして、よく木谷会長が比較に出されるWWEについてお伺いします。私が、シンガポールやマレーシアや香港に仕事で行くと、どこに行ってもWWEが放映されています。ソウルに行ってもWWEが流れています。
WWEが世界マーケットの展開に成功した分、海外マーケットはかなり持っていかれていますよね。その意味で、これから日本のプロレスコンテンツが海外展開するのは難しいと思うのですが、いかがでしょうか。
木谷:WWEがこれほど海外で伸びた理由は、やっぱり一番は英語だと思うんですね。英語と日本語のマーケットのサイズの違いって10対1ぐらいあると思うんですよ。そこの部分がまず大きい。
ただ、WWEは北米地域のみで展開している頃から、メディア戦略とマーチャント戦略が全然日本と違っていました。
僕は、1988年から1年間アメリカに行ったとき、レッスルマニアを見に行きましたし、ホーガンを見るために、アトランティックシティーまで行きました。当時から、日本とは全然違いましたよ。レッスルマニアは今まで3回観に行っています。
キム:何が違いましたか?
木谷:テレビのメディア戦略は、向こうのほうが断然進んでいました。週十何時間ぐらいテレビで流れていましたね。マーチャント戦略という点でも、商品数が当時から多かったですね。当時の日本は、グッズはほとんど作っていませんでしたから。
キム:なるほど。ここからプロレス的には核心を突く話になるのですが、WWEは、WWFからWWEに変わる際に、大きく戦略を転換しました。これは日本では難しいことだとは思うんですが、プロレスを明確に、「これはエンターテインメントなんだ」と定義しました。たとえば今、WWEは「われわれはIntegrated Media Contents Provider(インテグレーテッド・メディアコンテンツ・プロバイダ)だ」と明確に打ち出しています。
しかし、日本の場合、市場が明らかにアメリカと異なっています。プロレスをあくまで“闘い”として見たい人たちもいる一方、プロレスをエンタメとして見たい人、つまり、プロレスはお客を盛り上げるために全力で“闘う”ファイトなんだという認識で見ているファンもいます。プロレスのファン層がごっちゃになっています。
木谷:確かに、ごっちゃになっていますね。
キム:どちらかに舵を切ると、どちらかを捨てなくてはいけないという状況だと思います。昔からのプロレスファンとしては、WWEのようになってしまうと、WWEが完全エンタメ化する前の、アンドレ対ホーガン戦といった世界最強決定戦みたいなロマンと夢がなくなってしまいます。つまり、プロレスを定義するということは片方のコンセプトを捨てることにつながってくると思います。
そういった意味で、今後、新日本プロレスをどう打ち出していかれるのでしょうか。今までのような、あいまいな定義でやっていくのでしょうか、それとも、どこかの段階で明確にプロレスの定義を打ち出すのでしょうか。ちょっとコアな話になってきましたけど、いかがでしょう(会長からの回答は明日の対談に掲載します)。
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