「生真面目で頑張り屋」ほど危ない海外赴任 メンタルの健康を保つ「6つのセルフケア」
米国某州。小学校5年女子Dさん。30代両親とも初めての海外生活。母親の強い勧めで現地校に編入したが、母親は英語が苦手で学校対応は本人任せ、授業も宿題も理解できない日々。さらにクラスメートによるからかいや担任の不適切な指導などが重なり、食事が喉を通らない状態が続いた。そのうちに朝方トイレに入ると出て来なくなり、腹痛を訴え顔面チックの症状も出始めた。学校から「登校するように」と指示があったが無視していたところ「通報する」と言われてしまった。
現地での治療にはどうしても限界がある
海外赴任は有意義で楽しい反面、こうした危機も潜んでいる。そして海外で「こころの悩み」を相談したいと思っても、日本語と日本文化を共有できる精神保健専門家が常駐する海外都市は数えるほどで、現地での治療には限界がある。そのため多くの赴任者と帯同家族にとっては以下6つのセルフケアが精神保健対策となる。
1. 赴任前の現地情報収集と周到な準備
情報収集の必要性はいうまでもない。期待と現実とのギャップで適応障害を発症するケースは非常に多い。ケース1のA氏も、事前に現地状況を前任者から仕入れ、対応策をシミュレーションしておけば危機を乗り越えられたかもしれない。赴任前の勤務状況の把握は心の安心とゆとりにつながる。
2. ストレス要因を整理する
海外生活には目に見えるもの見えないものを含め、多様多彩なストレス要因が存在する。帯同家族の有無、自然環境、治安、言語、勤務先の邦人割合などにより労働環境は左右されるが、これらを意識して整理することで対策が立てられ解決できることは多い。
3. 3K3Gは要注意
「生真面目、几帳面、協調性重視」、「頑張り屋、義理堅い、頑固」といった性格傾向の持ち主の場合、大きな心的負荷がかかるとポキンと折れてしまうことがある。焦りや自責の念を感じたら早めに休むことだ。仕事や悩みを一人で抱えないこと。ケース2のCさんの場合、退職、海外での生活、不妊治療といった複数ストレスをひとりで抱え、孤立感を誰にも話せなかったことから生じた不調と言えよう。
4. 心身のストレス反応への気づきとケア
頭痛や腰痛、肩こり、目がチカチカする、判断力が鈍るといった自身のストレス反応に気づく感覚は家族や同僚のストレス反応への気づきにもつながり、適切に対処できるようになる。ケース3の場合、初めての海外生活で両親ともに余裕がなかったのだろうが、サポートのないまま見知らぬ環境に放り込まれたDさんの不適応は起こるべくして起こったと言えよう。学習環境に慣れるまで学校に付き添う、宿題を一緒にやる、家庭教師をつけるなどしてあげたら体調不良は起こらなかったかもしれない。早期対応は身体と心のケアに共通の原則である。
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