タイで注意すべきは生活習慣病--家族とタイ人社員の心のケアも重要
年間平均気温が28.6度の熱帯モンスーン気候のタイ。赴任となると、ついマラリアやデング熱といった蚊を媒介にして感染する熱帯特有の病気が心配になる。とくにデング熱は、大都会バンコクでも流行する年があり、日本人にも患者が出ている。
そのほか、タイでは狂犬病もまだまだ現役で、毎年10~20人ほどが発症して亡くなっているし、経口感染のA型肝炎、主に性交渉から感染するB型肝炎やHIV感染症(エイズ)など恐ろしい病気はたくさんある。
こうした病気については、社員を派遣する企業側が「健康診断や予防接種などの徹底、海外駐在員総合保険の加入などでフォロー」(日系大手事務機メーカー・総務)している。日本人駐在員本人もある程度の予防意識を持って赴任してくるケースが多いため、時折、日本人患者の話を耳にするものの、日本人が集団感染した事例を聞いたことがない。
実際、バンコクの病院関係者の話でも、日本人患者のほとんどは「水や氷、生ものなどにあたり、激しい下痢の症状に見舞われる急性胃腸炎かふつうの風邪の患者」という。
生活習慣の“負”の財産を蓄積
日本企業や駐在員は、タイの怖い病気に対しては比較的キチンとケアできている一方で、「生活習慣に対する個々人のケア」は疎かにしがちだ。
「比較的、高カロリーなタイ料理を食べる機会が多く(高カロリー摂取)、普段の移動は運転手付の社用車(歩くことが少ない)、運動は週末のゴルフだけ(運動不足)という一般的なタイの日本人駐在員の生活は、将来、生活習慣病になるための“負”の財産をせっせと蓄積しているように思えてしまう」と、バンコクにある東南アジア最大の病院、バムルンラード・インターナショナル病院の百武加恵医師は警鐘を鳴らす。