タイで注意すべきは生活習慣病--家族とタイ人社員の心のケアも重要
百武医師は、日本の自衛隊の医官として東ティモールでの国連平和維持部隊に従事したこともあるベテラン医師で、今は毎日約100人の日本人患者(全体では3,000人の患者)が訪れるバムルンラード・インターナショナル病院に内科医として勤務している。
日本の厚生労働省の定義では、生活習慣病とは「よくない生活習慣の積み重ねで引き起こされる病気」のことで、具体的には糖尿病、高血圧、心臓病、脳卒中、脂質異常症、肥満を指す。じつに、日本人の3分の2近くがこれが原因で亡くなっているというから決して侮れないのだが、生活習慣の改善については、企業側も「会社ではなく、自己責任で対処する範疇」(前出・日系大手事務機メーカー)と対応はにべもない。
「週一回のゴルフでは明らかに運動不足。毎日体重計に乗って、体重の増減を把握して、その増減によって摂取カロリーを調整するとか、運動量を増やすなどの対策をとることをおすすめします」(百武医師)
日本で暮らしていても同じだが、ここタイでも生活習慣の改善には自己管理が重要となる。
駐在員妻に多くみられる心の病気
日本人駐在員がケアを怠りがちなのは生活習慣だけでない。気候や文化・習慣の違う国では「ストレスによる心の病」も大敵。タイでは意外に駐在員妻が心に変調をきたしがちという。
「平日は毎日出勤する駐在員本人と違い、駐在員妻はつき合いが同じ駐在員妻同士に限られがちで、そこでの人間関係に支障をきたすと、゛言葉の壁゛から外出もままならなくなります。外出はスーパーだけという人もいました。しかしながら、軽い欝の自覚症状が出ても、タイには心療内科がなく、精神科しかないため、通院に゛二の足゛を踏んでしまう」(百武医師)