為替は1ドル100円くらいがちょうどいい 安倍首相のブレーン・浜田教授が講演
日銀が金融緩和に不熱心であったか否かについては、さまざまな議論がある。たとえば、マネタリーベースの対名目GDP比率などで見ると、日本は欧米とそん色のない金融緩和を行っている。これに対し、浜田氏は「リーマンショック後の各国中央銀行のバランスシート変化率を見ると、米英や欧州は大盤振る舞いの拡張を行ったが、日本だけは拡張しなかった」と日銀は金融緩和に抑制的だと考える理由を説明した。
「日銀がエルピーダをつぶした」
その結果、行き過ぎた円高が進んだというのが浜田氏の見立てだ。「安全資産と見られた日本国債に資金流入した影響はあるものの、リーマンショック後に円だけが20~30%も割高になったのは金融緩和の差が大きい。反対に韓国はウォン安となっており、韓国との競争では60~70%の円高のハードルをクリアしなければならなくなった。これではいくら生産性を上げても追いつかず、それでエルピーダメモリはつぶれた。日銀がエルピーダをつぶしたと言っていいと思う」
現在の為替の適正水準としては、「1ドル=100円くらいがいい」と言及した。理由として、「リーマンショック前は1ドル=100円~110円だったが、その後日本の物価はフラットか微減の一方で、米国は3%程度のインフレだったため。1ドル=110円は円安が行きすぎだが、100円ならちょうどいい」とした。
どの程度の金融緩和がインフレには必要かとの記者の質問には、「経済は医学に似ている。高熱の人にどれだけの薬をやれば下がるかということと同じで、(どれだけの金融緩和が必要かは)やってみないとわからない」と答えた。一方で、「私は無制限の金融緩和や無期限の金融緩和という言葉は嫌い。いつかはインフレになる可能性があり、そのとき日銀はインフレに対処しなければならない」とする一方、「多くの人はあたかも日本でハイパーインフレーションが起こるかのように言っているが、そんなことはない。デフレが続くかぎり、緩和を続ける必要がある」と緩和の必要性を強調した。
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