為替は1ドル100円くらいがちょうどいい 安倍首相のブレーン・浜田教授が講演

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自民党政権の経済政策とは完全には一致せず

現在の安倍政権の経済政策は、必ずしも浜田氏の持論とは一致していないということも指摘した。「自民党の政策を見て一つ不安があるのは、財政出動がないと政策が効かないと考えている人が党内や閣僚の中にいること。私の考えでは、金融を緩めて何も効かなくなったとき、初めて財政出動が必要になる。どちらかというと、財政政策は副次的な役割だと思っている」。公共事業を中心とした13.1兆円の今年度補正予算が15日に閣議決定されたが、浜田氏は暗に否定的な姿勢を見せた格好だ。

「私の考えは少し極端で、クルーグマンやウッドフォードなどの優秀な経済学者はゼロ金利になれば財政出動が必要と言っている。ただ、日本は現在のような財政危機の中、大盤振る舞いの補正予算などを組んで、将来の大増税につながらないかを心配している」。

またスピーチでは構造改革を重視している点を強調。「日本経済を強くするためには政府の介入より、竹中教授が言うように構造改革でやったほうがいい」「産業政策では、竹中教授の唱えるアイデアを導入すべき」「ゼロ金利以外のときは、財政支出は経済を刺激しない。本当に必要な公共事業はやるべきだが、財政政策には否定的だ。私は竹中教授の考えに近すぎるかもしれない」などと、経済学者としての考え方としては、安倍政権下で産業競争力会議のメンバーに登用された竹中平蔵・慶應義塾大学教授に近い点を、再三強調した。

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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