絵本の女性はなぜエプロン姿で描かれるのか

幼い子どもに刷り込まれる「理想の母親像」

景気が後退した1990年代の後半には、共働き世帯が専業主婦世帯を上回り、今日では共働き世帯は、専業主婦世帯の実に1.5倍にも達しています。純粋に自己のキャリアを求めて仕事を継続するだけではなく、家計を助けるために仕事を続ける女性も以前より増えています。

いずれの女性にとっても、その上の「1週間の家事時間の男女差」や、「父母ののぞましい姿」のアンケートと並べてみると、周囲からの視線なり、自分の中で「本来、女性はこうあるべきなのでは」という良妻賢母像が精神的なプレッシャーになる女性が多いのではと懸念します。また、働く母親を持つ子どもにとっても、なぜ自分の母親は、絵本の中のお母さんのようにいつも家にいてくれないのだろう、と悲しむことになるかもしれません。

世界の絵本は?

今回調べたリストの絵本は決して「国産」の絵本ばかりではなく、その半数以上が翻訳物で、そのほぼすべてが欧米に古くからあるおそらく「名著」と言われる類のものでした。

そして上記の「家事育児アイコン」を使った母親の絵本に絞って、その描かれた年代を調べてみると、大半が1980年代以前の絵本で、1940年代、1950年代が1冊ずつ、1960年代のものも3冊に上っていました。

もしこのような女性像が固定化しているとすると日本だけの問題ではないと考え、海外在住の友人に数冊の挿絵の写真を送って聞いてみたところ、「子どもが読んでいる」といわれたのは実はそのうちの1冊に過ぎず、その他の本については、「自分は子どものときに読んだ! 懐かしい! でも今は特に本屋では見かけないかもしれない」という答えが返ってきました。

幼いころから良妻賢母像が刷りこまれる一方で、「女性は社会に進出せよ」と相反するメッセージを送られるとすると、女子の頭が混乱してしまっても仕方がありません。

またシングルマザーをはじめとする片親世帯も増え、同性のパートナーシップ証明書も条例で認められたように、多様な価値観が当たり前になっている今日、固定化された家族像のみが描かれている絵本のリストもまた、再考の余地がありそうです。名作は残しつつも、絵本が子どもたちの人生の入り口でもあることを想定して、今の時代に即した内容や挿絵の絵本にまで、リストの対象を広げることも大事なのではと思うのです。

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