トヨタが一途に社員へ叩きこむ「思考の本質」 専門知識を持っているだけでは役に立たない

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これはヒトの本能であり、意識的に変えることはできない。それが、人間が現代社会のさまざまな課題に効果的に対処する障害となっている。残念ながら、DNAに組み込まれた「認知のクセ」をなくすことはできない。できるのは、こうした自分の脳の「認知のクセ」を意識して、それを修正する行動をつねに取ることだ。

「頭のいい人」とは、具体と抽象を自由に行き来できる人

『深く、速く、考える。「本質」を見抜く思考の技術』(クロスメディア・パブリッシング)。画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ヒトの脳は、ものごとを抽象化することも苦手だ。理解するとは、「新しい情報を頭の中にあることがらと結びつけること」だと説明したが、私たちの頭の中にある記憶のほとんどは、具体的なことがらだ。だから複雑な状況を目にすると、脳は「本質的な構造や因果関係」より「具体的で細かいこと」に意識を奪われてしまう。

これも脳のクセだが、このおかげで抽象化したり、抽象的な概念を理解したりすることが苦手だ。数学や哲学は、ものごとの性質を抽象化した学問だから、多くの人たちにとって理解するのが難しい。抽象的な議論が得意な人の中には、それを具体的なものごとに対応させないで考える人たちもいる。そうした人たちの思考はいわゆる「机上の空論」となりやすい。

本当に「頭のいい人」とは、具体と抽象を自在に行き来できる人だ。複雑な現象を具体レベルで見たら、次に俯瞰して抽象レベルから見るというように、自在に視点の抽象度を上げ下げできる人は、ものごとの本質を理解しやすい。

稲垣 公夫 グローバリング代表取締役

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いながき きみお / Kimio Inagaki

1951年生まれ。東京大学工学部卒業、ミシガン大学工学部大学院修士課程修了。NECにて製造管理部担当部長、NECアメリカ副社長などを歴任。ジェイビルジャパン代表取締役社長などを経て現職。エリヤフ・ゴールドラット博士の『ザ・ゴール』を契機に国内へ広がったTOC(制約条件の理論)の考え方にいち早く着目し、同書日本語版の解説も務める。また、米国でのトヨタ研究への造詣が深く、第一人者であるミシガン大学のジェフリー・ライカー教授らによる『ザ・トヨタウェイ』『トヨタ経営大全』シリーズや、同じくトヨタの製品開発方式(リーン製品開発)を体系化したアレン・ウォード博士らの著作の翻訳・研究でも知られる。2010年にはグローバリング(株)を設立し、主に製造業を対象に、リーン製品開発や経営戦略のコンサルティングを行う。主な著書に『深く、速く、考える。――「本質」を瞬時に見抜く思考の技術』(クロスメディア・パブリッシング)、『マンガでわかる! トヨタ式資料作成術』(宝島社)、翻訳書に『トヨタのカタ』(日経BP社)など多数。
 

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