ABCマートが確立した勝利の方程式 激戦の靴市場で初のトップへ、“流通優位"がここにも

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バンズ、ホーキンスはNIKE(ナイキ)やadidas(アディダス)など、いわゆるナショナルブランド(NB)と呼ばれるメーカーの商品よりも安く仕入れ、相対的に高い粗利を稼げる。これが、ABCマートにとって高収益の最大の要因となっている。

手薄のレディースでも独自ブランドが成長

近年は、これまで手薄だった女性(レディース)向け商品でも、独自ブランド「NUOVO(ヌオーヴォ)」の育成を進めている。認知度向上のために展開している、篠田麻里子さんを起用したCMや雑誌広告がピタリとはまり、ヌオーヴォの名を冠した店舗が次々とオープンしている。こうした独自ブランドでユーザーを囲い込み、売上高の45%程度を占めるほどまでに高まっている。

ただ、ABCマートの「囲い込み」戦略は独自ブランドにとどまっていないのもキモだ。ナイキやアディダス、PUMA(プーマ)などNB商品でも、半分程度はABCマートが企画・提案した別注・限定品モデルとなっているのだ。グローバルブランドには把握できない国内消費者のニーズやトレンドを吸い上げ、小回りのきいた商品をNBで仕入れ、実はABCマート限定で販売している。

こうした限定品は買い切りのため在庫を抱えるリスクはあるが、他店では買えない「ABCマートだけの商品」が強みとなり、固定ファンの獲得や単価の維持につなげている。独自ブランドと限定品を合わせると、売上高の約7割もが現在ABCマートでしか買えない商品なのだ。

国内流通業界では、コンビニエンスストアやスーパー、ドラッグストアなど小売り側が独自に企画したプライベートブランド(PB)商品の台頭が目立ってきているほか、家電量販業界では合従連衡によって購買力の強化が進んでいる。

細かい点こそ違うが、ABCマートの台頭はまさにこうした流れと重なる。強い流通業者がますます強くなる。靴小売り業界でも“流通優位”の構造が目立ってきた。

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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