──せっかく来たのに欧米と変わらないのでは拍子抜けですね。
そうなのです。だからこそ美術館に限らず、古いものの保存に力を入れてほしい。近代的な建築物やアートも好きですが、同時にこれ以上、東京や京都に変わらないでもらいたい。日本にフランスと同じような法律があるかわかりませんが、古い建築物などを保存することは非常に重要です。ついこの間まであったものが、突然建て替えられていたりすると、本当に悲しい気分になります。
東京ミッドタウンはとてもエレガントなところだと思いますが、一方で私は谷中のような昔の日本に出会える場所も好き。東京中が新たな開発だらけになったら非常につまらないと思います。
京都を訪れる多くの外国人は最初、あれ?となるのです。フィレンツェのように街全体が歴史的建築物だらけだと思って訪れたのに、中心街は意外と新しいものが多いから。文化的遺産は本当に守ってほしいと強く感じます。
ホテルオークラをなぜ保全しなかったのか
──ホテルオークラ東京の建て替えに反対の声を上げたのも、外国人でした。
ホテルオークラ東京が建設されたのは1962年。60年代は日本のデザインが花開いた時期であり、オークラはそのシンボルともいえるエレガントな建築物で、まさに日本のデザインのお手本のようでした。なぜ保全しなかったのかいまだに理解できませんし、残念でなりません。
──古いものを守るにはどうしたらいいのでしょうか。
政府に働きかけるしかありません。個々に特定の建築物を保全しようという活動はあるようですが、そうしたものが一体となりムーブメントになれば影響力が増すのでは。
ただ、政府がすべてできるわけではないので、個人レベルでも活動を続けることが大事。京都では町屋を宿泊施設に変える活動をしている米国人男性がいて、古い建築物を保全するだけでなく、それを生かすといういい例になっています。
フランスでは、家を買ったにもかかわらず窓一つ変えられないとか、面倒なこともたくさんあります。それでも、そのおかげでパリはいつまで経ってもパリのままでいられる。歴史を守るためには、多少の規制も必要なのです。
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