「みんなの前」という部分に引っかかる方が多いと思います。これは、注意(叱責)の内容によるのです。
みんなが守らなければいけないルール(時間厳守など)や職場での決まりごとなど、共通の内容であれば、みんなの前で注意することに何ら問題はなく、むしろみんなの前のほうがいい場合もあります。
たとえば、特段の理由もないのに頻繁に遅刻してくる場合、みんなの前で注意することによって、職場のメンバーの気持ちの代弁にもなるのです。あいつだけ目こぼしされているという不平感を減らし、士気を下げることを防ぎます。内容がプライベートなことに特化したり、関係したりする場合を除き、大抵のことはみんなの前で注意して構わないのです。
ただ、この時に注意したいのは、「人格否定表現を含まないこと」です。
過去の判例を見ても、人格否定表現が争点になっています。では、その人格否定表現とは何なのか。人格の定義がなかなかわかりづらいところなので、犯罪心理学の例を挙げます。
「人格否定」につきまとう巨大なリスク
A「嘘をつかないでください」
B「嘘つきにならないでください」
質問をした後に、この言葉を投げかけると、どちらかが、嘘をつく確率がぐんと低くなります。それはBの方です。嘘をつかないで(行動)、を制限されるのと、嘘つき(人格)にならないでと制限されるのとでは、圧倒的に人格にアプローチされるほうが影響を受けるのです。
ということは、人格否定をされると、それだけダメージが大きいといえます。「早くしろ!」は行動に対しての言葉であり「のろまだな!」は人格への言葉。ということは、後者を使うことは避けていただきたいのです。
「相手が嫌がることをしない」の基準を瞬時に判断することは、なかなかできません。ただ、明確な拒否の意思表示がある場合はもちろん、「相手が嫌がっている」ということが分かった時点でやめる(続けない)ということが何よりも大切です。
日常的なやり取りの中で、意図しない失言や思いもよらぬ状況(そんなことで傷つかないだろうと思われるようなこと)が、一度あったからといって、訴えられることはまずありません。なので、必要以上に神経質になることはないのです。しかし、相手が嫌がっていることを繰り返し行うのは避けなければなりません。そのためには、基準を明確にする必要性があります。人によって受け取り方は違うので、単なる禁止事項ではまったく意味がなく、状況判断能力が問われるのです。
具体的なケースをもとに、さまざまな角度から基準を明確にしていけば、必要以上に恐れることはありません。
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