毎日同じ職場で仕事をしていれば、ある程度、家庭環境や家族、趣味のことなどをお互い知っていたほうがいいと思いますし、「最近、お父様の調子どう?」とか「昨日のお子さんの運動会どうだった?」などの声掛けが、コミュニケーションにおける潤滑油の役目を果たすのです。
では、実際に「過度に」という基準に抵触するのはどこからなのか。ハラスメントに関する書籍や研修資料などを紐解くと、そこには大抵「相手が嫌がるまで立ち入ること」とあります。これによって、ますます混乱する方は少なくないはず。なぜなら、「嫌がること」の程度は人それぞれ違うからです。加えて、明確な意思表示がなければ、嫌がっているかどうか、本当のところはわかりまえん。
誰が見ても、明らかにひどい暴力や暴言、犯罪に抵触するような行為は別として、ごく一般的な行為や言動を制限する必要はありません。ただ、その行為に対し、相手が嫌がった時には、やめないとならないのです。その行為を続けてしまうことによって、ハラスメントの問題に発展します。
理論だけではわかりにくいでしょうから、よくあるケースを紹介しながら解説していきましょう。
笑顔の「またの機会に」から何を読み取る?
■ケース1:職場で異性を食事に誘う場合
「上司にしつこく食事に誘われて困っています」という女性職員からの相談は、非常によくあります。これだけ見ると「食事に誘ってはいけない」ととらえがちですが、決してそういうわけではありません。
とある日、残業をしていて、2人きりになったタイミングに、上司から部下へ声を掛けたとします。
上司「今日帰りに、食事でもどう?」
部下「ありがとうございます。(笑顔で)申し訳ないのですが、今日はちょっと、この後予定があって。また誘ってください」
この時点では、本当に用事があるのか、単に行きたくないのか、判別ができませんね。何日か経ってから、また声を掛けてみました。
上司「この前は急だったから、今度の水曜日、よかったら食事どう?」
部下「あぁ、残念です。申し訳ありません。今度の水曜日は、先約があって。すみませんが、またの機会に」
さて、この時点で注意が必要になります。この前は、急だったし、今回もタイミング悪く予定が入っていることも考えられます。しかし、同じ職場の上司に「あなたとは食事に行きません」とはなかなか言えません。やんわりと断っている可能性が出てくるのです。
状況によっては、この時点で、今後誘うのを止めるという決断を下すのもありです。誘う側の性格によっても、判断が分かれるところです。積極的な方は、さらに誘いを続けるでしょう。なぜなら部下は、笑顔で「また誘ってください」「またの機会に」という発言しているからです。
さぁ、後日……
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